啐啄 6

 ヨゼフィーネの妊娠が発覚してから三日目の朝、アルフォンスが王宮を訪れていた。義妹との件を、直接アレクに確認するためである。
 又、この日は何も知らないビッテンフェルトが、ヨゼフィーネに処置をさせるため、病院に連れて行く予定の日でもあった。

   

 父親が七元帥の一人であるアルフォンスは、皇帝のアレクと小さい頃から一緒に過ごす機会が多かった。アレクと年が近いフェリックスや他の元帥の子ども達が遊び相手であったのに対して、少し年上のアルフォンスは彼らの面倒を見る兄貴分といった感じで接していた。
 アルフォンスが寄宿制の学校に入ってからも、アレク達は休暇ごとに逢いたがった。そして、アルフォンスの体験した新しい世界の話を、彼らは興味津々で聞いていた。
 月日が流れ士官学校を卒業したアルフォンスは、皇帝に忠誠を誓う自分の立場を充分自覚するようになっていた。だが、アレクを弟のように思っていた気持ちはまだ心に残していた。一方アレクの方も、兄のように慕っていたアルフォンスを、家臣としては勿論だが大切な友人として得難い人物だとずっと思っていた。
 そんなアルフォンスの悲痛な表情で自分を見つめる姿を見て、アレクは彼が義妹のヨゼフィーネとのあの出来事を知った事を感じていた。
「アルフォンス、・・・ヨゼフィーネから聞いたのか?」
「ええ・・・。でも、何故です?・・・ヨゼフィーネは私の大事な義妹ですよ!」
「・・・初めは、そんなつもりではなかった。あの子が軍服姿の自分の母親を見たがっていたから望みを叶えてやろうという軽い気持ちで、書斎に招いた・・・」
「では、どうして?」
「書斎で酒を飲んでいるうち、訳がわからなくなっていた・・・。気が付いたらあの子を・・・」
「正体をなくすほど酔ってしまわれたのですか?陛下らしくもない・・・」
「あのときは、本当にどうかしていたのだ。・・・・・・後悔している」
 深く悔やんでいる様子のアレクを見て、アルフォンスが大きな溜息をつく。
「何度も君に打ち明けようと思った。だが、彼女は誰にも知られることを望んでいなかったし、忘れたいとも言っていた・・・・。いや、これは単なる私の見苦しい言い訳だな・・・」
 自嘲気味に話すアレクは、少し涙を浮かべているようでもあった。
「実のところ私は、君に知られてほっとしている。隠しているのがずっと辛かった・・・。君の信頼を裏切ってしまった自分が許せない・・・」
 罪の意識に捕らわれているアレクを見て、(陛下の言葉に嘘はないだろう・・・)と、アルフォンスなりに感じていた。だが、昨日のヨゼフィーネの絶望的な顔を思い出すと、話す言葉が見つからない。ふたりとも黙ったまま、時間だけが過ぎていた。
 そのとき、女官が二人にお茶を持ってきた事を告げた。彼女が部屋に入ってくるのを見計らったように、アルフォンスが目の前のアレクの頬を思いっきり殴った。突然の出来事に、女官は手に持っていたお茶を落として悲鳴を上げていた。その声を聞きつけた皇帝の身辺警護をする近衛兵が、慌てて部屋に駆け付けてきた。
「ワーレン大佐が陛下に危害を!」
 女官の訴えを聞いた近衛兵は、すぐさまアルフォンスを拘束しようとした。
「待て!アルフォンスに手をだすな!」
 思わず出したアレクの命令に、アルフォンスを押さえつけている兵士達の手が外れる。辺りが急に騒々しくなり人々も集まってきた。アレクは騒動からアルフォンスを避難させる為にも、ひとまず彼を下がらせた。


 陛下の言葉に従って王宮を出たアルフォンスは、そのまま軍務省に向かっていた。そして、執務室で待っていたミュラーに、アレクとヨゼフィーネの件を報告をする。
「フィーネも陛下も、お互い関係があった事を認めました・・・」
 アルフォンスはそう告げると、ミュラーの目の前に<退役届>と書かれた一通の封筒を差し出した。彼は出向扱いでずっとアレクの元にいたが、正式にはまだ軍務省に所属している軍人である。
「陛下を殴ってしまいました。責任を取らせてください」
「えっ、アルフォンス・・・。待て!早まるな・・・」
「私の覚悟は出来ています。退役が正式に決まるまで、自宅にて謹慎しています」
 アルフォンスはそう言うと、執務室から出てしまった。ミュラーはキスリングに連絡を取ると、急いで王宮に向かっていた。



 その日、ヨゼフィーネを病院に連れていく予定であったビッテンフェルトは、自宅にいた。妹に付き添うつもりのルイーゼも、子ども達を連れて実家に来ていた。可愛い盛りである孫達が、ビッテンフェルトのやるせない時間の経過を助けていた。
 ビッテンフェルトは、今日から三日間の休暇を取っていた。病院で処置を済ませた後のヨゼフィーネの精神状態が心配だったし、娘を傷つけた憎き相手の男を捜しだす時間も欲しかった。
 書斎で残していた仕事を片づけていたビッテンフェルトの元に、ミュラーから連絡があった。
「なに~!アルフォンスが陛下を殴った?・・・」
 突然の出来事に、ビッテンフェルトが驚いていた。


 その頃、問題のアルフォンスは、妻のいるビッテンフェルト家に来ていた。そして、ルイーゼに退役届を出したことを報告する。夫の意外な言葉を聞いて驚いたルイーゼが、書斎にいる父親の元にかけ込んで来た。
「父上!、アルフォンスを思いとどまらせてください。突然、『軍人を辞めた!』と言い出しているんですよ」
「大丈夫だよ、ルイーゼ!私は軍人を辞めても、家族を養っていくぐらいの器量は持っているつもりだよ」
 後ろから妻を追いかけて説明するアルフォンスを見て、ビッテンフェルトはそのとき初めてアルフォンスが我が家に来ている事を知った。
「フィーネの事やヨーゼフの手術の事で頭が一杯なのに、あなたまでこんな事をするなんて・・・信じられない!」
 感情的になっているルイーゼに、ビッテンフェルトが諫める。
「ルイーゼ、落ち着け!それに、ヨーゼフ坊やの手術ってなんの事だ?」
 孫のヨーゼフ坊やの手術の事が初耳だったビッテンフェルトは、アルフォンスとルイーゼの二人に問い詰めた。
「・・・実は先日、医者からヨーゼフの心臓は、手術が必要だと言われまして・・・」
 アルフォンスが、ヨーゼフ坊やの病状を説明した。
「なに!ヨーゼフ坊やは一歳前だぞ・・・。そんなに小さいうちから、胸を切り開いて心臓の手術をするのか?」
 ヨーゼフ坊やの小さな身体を思うと、心配のあまりビッテンフェルトはつい怒り口調になっていた。
「今すぐという訳では無いのです。ヨーゼフの様子を見て、もう少し体力が付いてからという事になるでしょう。義父上には、私達自身がもっと冷静になって落ち着いてからお話ししようと思っていました・・・」
 アルフォンスの話しぶりからも、ビッテンフェルトにはヨーゼフ坊やの手術が簡単なものではなく、二人ともとても不安に感じている様子が判った。ここで自分があれこれ言ったら、ルイーゼが更に動揺するかもしれない・・・そう考えたビッテンフェルトは大きく深呼吸をして、気持ちを切り替えた。
 そして、別の話題である先ほどのミュラーから聞いた一件を、アルフォンスに尋ねた。
「さっきミュラーから連絡があった。お前、陛下を殴ったんだって?」
「えっ!あなた・・・」
 その出来事を知らなかったルイーゼが、目を丸くして夫を見つめた。
「えぇっと・・・、そのぉ・・・つい、手がでてしまいました・・・」
「ば、ばっ、ばかもん~~!お前、自分が何をしたのか判っているのか!ヘタすれば皇帝に対しての反逆罪ともとられる行為だぞ!」
「すみません・・・」
「まぁ、陛下の方も、『事を荒立てるな!』という命令だし、お前が出した退役届も認めないという事だから、御自分の非を認めているのだろう・・・。しかし、一体何があったのだ?喧嘩などお前達らしくもない・・・」
 アルフォンスが黙ってしまった。
「まあいい。今、ミュラーがこっちに向かっている。お前が言いたくなければ、ミュラーからの説明を聞く迄だ!」
 ビッテンフェルトはそう言って溜息をつくと、苦い顔になっていた。
(こういう日に限って、次から次へとややこしい問題が起きてくる・・・)


 数十分後、ミュラーがビッテンフェルト家に駆け付けてきた。書斎でビッテンフェルトとミュラー、アルフォンスが話し合う。
「今回の件に関して陛下は、『友人同士の諍いでの事だから、アルフォンスの処罰は認めない』との御命令です。しかし、この騒ぎは数日中には噂になるでしょう。従って私としては、当人同士は勿論のこと周囲が落ち着く迄、アルフォンスには休暇という名目で自宅謹慎させたいと考えています」
「そうか・・・。しかし、こうなった原因はなんなんだ?陛下とアルフォンスが仲違いすること自体、俺には信じられないのだが・・・」
 どちらとも穏やかな性格である。両者をよく知るビッテンフェルトが、驚くもの無理もない。ミュラーは小さな溜息をつくと、席を外していたルイーゼを呼んだ。
 子ども達の世話をミーネに頼んだルイーゼが、書斎に姿を見せる。ミュラーは関係者が揃ったところで、深刻な顔で話を切り出した。
「まず、ビッテンフェルト提督に、フィーネの父親として聞いて頂きたいご報告があります」
「フィーネの父親として・・・」
 ミュラーの異常なくらい重々しい様子に、ビッテンフェルトが不審になって身構えた。
「・・・フィーネのお腹の中にいる赤ん坊の父親は、陛下です」
「・・・ミ、ミュラー、もう一度言ってくれ!俺には意味がよく判らない!」
 自分の耳を疑うかのように、ビッテンフェルトはミュラーを促した。
「フィーネは、陛下の御子を身ごもっているのです」
「はぁ~、・・・・・・フィーネを傷つけた相手が、陛下?そんなバカな!」
 ビッテンフェルトは信じられないような顔でミュラーを見つめる。
「陛下は、フィーネの件をお認めになっています。アルフォンスが確認しました・・・」
 アルフォンスらしくない行動の裏には、この一件が絡んでいることをビッテンフェルトは察した。動揺を隠せずにいる父親に、ミュラーは冷静に言葉を続ける。
「ただ陛下にはフィーネが妊娠したことまでは、まだ告げてはいません。私としては、まずフィーネの父親であるビッテンフェルト提督が、その事実を受けとめた後、陛下にご報告しようと思っています」
 考え込んだままのビッテンフェルトからは、すぐには反応は無かった。震える声でミュラーを問い質したのは、ルイーゼであった。
「相手の男性が陛下!私の大事な妹を乱暴したのは、忠誠を誓っている陛下だと言うの?」
 大粒の涙を零しながら、ルイーゼがミュラーに訴えた。辛そうにミュラーが頷く。
「アルフォンス・・・あなたは、私の代わりに陛下に手を挙げたのですね・・・」
 納得できなかった夫の行動の真意を、ルイーゼが理解した。
「ルイーゼ!フィーネは私の義妹でもあるんだぞ」
「でも、あなたが陛下にそんなことをするわけがない・・・。私の怒りを見ていたから・・・私や父上が大それた事をしてしまう前に・・・そうでしょう?・・・あなたの大切な仕事である軍人を辞める覚悟で・・・」
 アルフォンスが震えるルイーゼを抱きしめて落ち着かせる。まるで、その場は時間が止まったような空間になっていた。


「義兄さん、軍人を辞めるの?」
 ヨゼフィーネの声に、皆はっと息を呑んだ。自分の部屋にいたはずのヨゼフィーネが、いつの間にか青ざめた顔で書斎のドアの前に立っていた。
「・・・姉さん、ごめんなさい。私、姉さんの家庭を壊すつもりなんてなかったのに・・・」
 姉に謝るヨゼフィーネを見て、アルフォンスは慌てて弁明した。
「違う!フィーネのせいじゃない!」
「だって、私がこうなったから・・・」
 そして、ヨゼフィーネはミュラーに向けて頼み込んだ。
「ミュラーおじさん、私のせいなの・・・。アルフォンス義兄さんに泣いた顔を見せたから・・・。アルフォンス義兄さんは悪くないの。だから軍人を辞めさせないで!」
「フィーネ、これは私の意志だよ」
 首を左右に振りながら、ヨゼフィーネはアルフォンスの言葉を否定した。
「違う!私の事がなかったら、アルフォンス義兄さんは陛下に手を出すことなんてなかったでしょう!」
 興奮して叫んだヨゼフィーネだが、突然胃から何か込み上げる不快感を感じて、両手を口に当てながら慌てて洗面所にかけ込んだ。
 その様子にルイーゼは勿論周りも、妊娠初期に見られる吐き気、つまり悪阻が始まったのであろうと考えていた。だが、それは違った。
「あなた!父上!フィーネが大変!」
 心配して妹の様子を見にいったルイーゼの叫び声に、その場にいた男三人は慌てた。
「どうしたんだ!」
 駆け付けたビッテンフェルト達に、ルイーゼが悲痛な声で叫んだ。
「これは悪阻ではないわ!フィーネは、血を吐いているの。早く病院へ!」
 真っ青な顔で気を失っているヨゼフィーネを、アルフォンスが抱える。病院に向かう車の中で、誰もが言葉を失っていた。



 運ばれた病院で、ヨゼフィーネは急性の胃潰瘍で入院が必要と診断された。病室で薬が効いて眠っているヨゼフィーネの心身共に疲れ切っている様子に、ビッテンフェルトは心を痛めた。
「ミュラー、俺はフィーネの事を第一に考えたい・・・。だが今は、何をどうすればいいのか判らないんだ・・・」
 やつれた娘の寝顔を見つめながら話すビッテンフェルトは、まだ混乱しているようであった。
「ミュラーおじさん、陛下にはフィーネの妊娠を知らせないで!」
 涙でくしゃくしゃになった顔で、ルイーゼがミュラーに頼み込んだ。
「しかし・・・これはもう、フィーネだけの問題ではなくなっている・・・」
「でも母体に何かあったら、胎児の命だって保証出来ないのよ・・・。これ以上、フィーネに苦しみをあじあわせたくない!」
 ルイーゼの言葉を受けたミュラーは、そのままビッテンフェルトを見つめた。ビッテンフェルトはミュラーに(早まった真似はしない・・・)というように頷いて見せた。ビッテンフェルトから堕胎という選択が消えた事に、ミュラーはひとまず胸を撫で下ろした。ビッテンフェルトの気持ちを確認したミュラーは、ルイーゼの願いに応じた。
「ルイーゼ、判った。まず、フィーネの状態が落ち着いてから・・・。そのあとのことは、みんなで考えよう」
 感情的になっているルイーゼを宥めるように、ミュラーが話す。しかし、諭しているミュラーだって、信じられない出来事で夢を見ているような気持ちになっていた。その後、ミュラーはビッテンフェルトとルイーゼを残し病室を出た。


「あなた、大丈夫ですか?」
 病院の廊下の片隅で考え込んでいたミュラーに、声をかけたのは妻のエリスであった。ミュラーからの連絡で駆け付けてきたのである。ミュラーは、今のヨゼフィーネの状態と、ビッテンフェルトとルイーゼの様子をエリスに説明した。
「この二、三日のあなたの様子から、もしかしたらフィーネの赤ん坊の父親は、私達が知っている男性なのでは?と感じていました。でも、陛下とは・・・。陛下も罪なことをなさいましたね・・・」
 決して人を非難することがないエリスだけに、最後のひと言にその怒りをミュラーは感じた。そして、二人はその場で暫く話し合っていた。


 ヨゼフィーネの病室にミュラーとエリスが入ってくる。
「エリス姉さん・・・こんな事って信じられない・・・」
 エリスを見た途端、ルイーゼはその胸にかけ込んで泣き出した。
 ベットに横たわっているヨゼフィーネは勿論だが、付き添うビッテンフェルトやルイーゼも病人のように憔悴している。エリスは眠っているヨゼフィーネの頬に手を添えると話しかけた。
「可哀想に・・・。どんなに辛かった事でしょう・・・」
 そして、落ち込んでいるビッテンフェルトやルイーゼに提案した。
「ビッテンフェルト提督、フィーネが退院したら暫くハルツの別荘で過ごさせませんか?静養も兼ねて・・・。勿論、私も一緒に行きます」
 エリスの言葉を援護するように、ミュラーもビッテンフェルトを説得する。
「私もエリスの意見に賛成です。確かに今はハルツの別荘にいた方が周囲の目からも逃れられますし、何よりヨゼフィーネ自身が余計な気を遣わなくて済みます」
「そうかもしれない・・・」
 少し考えたビッテンフェルトが応じた。
「私も、フィーネと一緒にハルツへ行きます」
 父親の考えを聞いて思わずルイーゼが伝える。そんなルイーゼに、エリスが諭した。
「ルイーゼ、今はヨーゼフ坊やが大変な状態でしょう。坊やには母親のあなたが必要よ」
「でも・・・」
 ルイーゼの唇が震えだした。ルイーゼの気持ちは、エリスには痛いほどよく判る。妹のヨゼフィーネが可愛くて、自分の結婚より妹の幸せを願っていた姉である。こんな状態のヨゼフィーネに付き添ってやりたいと、誰よりも思っている筈である。
「大丈夫!フィーネには私が付いているから・・・」
 辛い状態のヨゼフィーネの姉として、心臓の疾患が見つかったヨーゼフ坊やの母親として、苦しい板挟みになっているルイーゼを安心させるように、エリスが告げた。
「私はフィーネが可愛い。母親のように守ってやりたい・・・。それなのに、あの子が今一番、精神的にも肉体的にも追いつめられている。フィーネの体と精神の安静を最優先させましょう。フィーネが、自分の体と生まれてくる赤ちゃんのことだけ考えられるような環境を作ってあげなくては・・・」
 エリスの言葉は、ビッテンフェルトが先ほど医師から告げられた注意事項と重なっていた。結局、ビッテンフェルトはヨゼフィーネの父親として、エリスの提案を受け入れることにした。



 数日後、病状が落ち着いたヨゼフィーネは退院した。だが、自宅には戻らず、静養のためそのままエリスと共にハルツにあるビッテンフェルト家の別荘に向かっていた。
 そこは昔、亡きアマンダがヨゼフィーネを産んだ際、妻へのプレゼントとしてビッテンフェルトが購入した別荘であった。この別荘の前の所有者は、オーベルシュタインの執事を務めたエーレンベルグである。未婚で身ごもったアマンダは、知り合いでもあったそのエーレンベルグの好意でこの別荘に住み、ルイーゼを産んだのであった。
 そして今、娘のヨゼフィーネが初めての妊娠生活を、母親のアマンダと同じようにこの別荘で過ごす事になった。不思議な巡り合わせであったが、そのときのビッテンフェルトにはそんな感慨に浸る余裕はなかった。


<続く>