流れ行く空と雲



サラサラとういう水のせせらぎ



視界の端を掠める木々の梢



時折水にふさがれる視界



結論
俺、今溺れてます。






軍師と軍師(見習)





「がぶぼぶがっ!!」


気がつくと俺は溺れていた。
滝から落ちて意識を失っていたらしい。
滝から落ちたわりに怪我らしい怪我が無かったのはいいが、さっき述べた通り俺は今溺れてます。


「って現実逃避してる場合じゃないだろ俺!!」


慌てて泳ごうとしても何かが体に絡まって動きづらい…
まるでリリイがわがまま言って絡んできている時ぐらい動きづらい。
あぁ・・・あいつにはものすごく迷惑をかけられたな。
子守2人組みは今でも振り回されてるんだろうなぁ。


「はっ!!また現実逃避してしまった!!」
「何をしているんですか?」
「なにって現実逃避?」


って…誰?


声の主を探そうとジタバタ暴れだすと同時に俺の体に網のような物が被せられた。
そしてずるずると岸へと引かれる。


助かった。

と、言いたいところだが俺はまたもや嫌な予感に捕らわれていた。
恐る恐る網の先のほうを見ると、


黒尽くめの男が網を引っ張っていた。


誰!?

え、てかコレ投網!?


「そろそろこちらの世界に戻って来ないか、。」
「こっちってどこだよアルベルト。」


そう言いつつ声の方向に顔を向けると白いコートに身を包んだ冷たい印象の男が立っていた。
アルベルトは俺の親父の先生の叔父の孫で(接続詞が多いな)、一見クールな奴だが何気にやたらと高い野望をもっている以外と熱い奴だ。


「現実世界に、だ。相変わらず現実逃避をする癖が抜けないようだな。」
「ほっとけ。」


俺が現実逃避をする癖がついたのは俺のせいじゃない。

剣の稽古だと言って真剣を抜いて追い掛け回す某騎士団長2人組みだとか

魔術の練習だとか言って切裂きを連打してくる奴とか

遊びに来るたびに俺を追い掛け回しつついて遊ぶ熊とか

みんなあいつらのせいだ!!


「ユーバー魚は釣れたのですか?」


誰!?
ってさっきからこればっかだな。


茂みを掻き分け出てきたのは銀髪でハルモニアっぽい服装をした少女で、彼女に話しかけられた黒尽くめはユーバーと言うらしい。


はて、どこかで聞いたことがあるような。


「魚は釣れなかったが肉は釣れたぞ。」

この場合
釣れた物=俺
釣れた物=肉
よって
肉=俺


「俺は食料じゃない!!」
「そんなことはわかっている。」


冷たい突っ込みアリガトウ、アルベルト。


「ユーバーまた無益な殺生をして!!」
「いや、俺まだ死んでないし。」



まだか

俺に死んで欲しいのか?アルベルト。


まさかお前には利用価値があるからな


利用価値かよ



「第一ルック様に人肉なぞ食べさせるわけにはいきません!!」


ルック!?


ルックってあの

人に問答無用で切裂きを連打したり

魔法レジストを上げるためだって輝く風(Lv5)を使って自分だけは回復してたり

手元が狂ったって葬送の風(80%で即死)を俺に使ったり

レックナートさんにこき使われているあの?


、顔に出てるぞ。」
俺が今までルックの事を思い出し遠い目をしていると、いつの間にかアルベルトが俺を見下ろしていた。

「な…なにがかな?」


驚きつつ逃げようと体を動かすが体が動かない。


「投網に絡まっているから逃げれないぞ。」


…終わった。
俺の人生終わった。

なんて諦められん!!
せっかく俺は自由(仕事放棄)を手に入れたんだ。
こんな所で人生諦めてたまるか。


「ところでそちらの方。」
「な、何かな。」


ユーバーとやらを叱り付けていた少女はやたらとすっきりとした顔でこちらに向かってくる。
さっきの黒尽くめを探すと、


焦げて転がっていた。
手足痙攣してるぞ?いいのかあのままで。


「さて、ユーバーが失礼しました。あなたを食べたりする予定は無いので安心してください。」
「ど、ども。」


そういうと少女はきびすを返し森の奥へと帰ろうとする。


「まてセラ。こいつは肉にはならないがよい拾い物だぞ。」
「どういうことですアルベルト。」


少女―セラは森へと引き返しかけていた足を止めこちらへと戻ってきた。


「こいつはな、デュナン共和国の―――」
「あ――――――――――――――――――――!!」


嫌な予感がする、絶対嫌な予感がする!!
このまま彼女らに付いていったら絶対よくないことが起こる!!


「そろそろ俺目的地に行くんで、それじゃ失礼します。」
アルベルトの言葉を中断させ早口でどこかへ行くことを告げると、紋章を発動させようと意識を集中させはじめた。
瞬きの紋章を発動させようと目を瞑り意識を紋章に集中させると同時に嫌な予感の元凶がやってきた。


「師匠に挨拶も告げずにどこに行く気だい?」


「誰が師匠だ!!」


と、叫びたかったが今は逃げることに集中しないと奴にヤラレル。
その証拠に奴の右手の紋章が輝きだし今にも切り裂きが発動しそうな気配がする。


転移呪文が完成すると同時に奴の顔見ようと目を開けると…


吹きそうになった。


だって、あのお面…趣味悪過ぎだって。


俺が笑う気配を感じ取ったのか奴は無言で右手を上げて呪文を発動させた。
が、しかし先に呪文を完成させていた俺の呪文のほうの発動が早く何とか無事に転移することができた。


…そいや俺転移先どこにせっていしてたっけ?


俺の受難は暫らく終わりそうに無い。










「で、なんでがこんなところに居たんだい。」


を逃がしたのがよっぽど悔しかったのか肩を少し震わせながらルックがアルベルトに尋ねる。
対するアルベルトは珍しく悔しそうな顔をしていた。
どうやらアルベルトも逃げられたのが悔しいらしい。


「どうせ仕事に嫌気をさして家出でもしたのでしょう。」


「彼はいったい何者なのですか?」


セラが黒焦げになったユーバーを足蹴にしつつアルベルトに尋ねる。
セラの顔は相変わらず無表情に見えるが付き合いの長いルックにはセラの内面がよく見えた。

(アレは好みの顔だったな。)


アルベルトはセラの質問を聞くとやたらと誇らしげに語り始めた。


「彼、はデュナン国内においてあの世代では唯一私と渡り合える軍師ですよ。もっとも本人は『俺は文官で軍師じゃないし軍師だとしても見習だ』と言って聞きませんがね。」


セラの顔に驚きが走る。
あの唯我独尊で自分以上に軍略の才がある人間は居ないと豪語するアルベルトが他人を誉めたのだ。


「そしては地位的にも素晴らしく父親は――――――」









アルベルトがの出自について話そうとしている時は肌の黒い少女に弓を向けられ両手を挙げていた。


「だから俺怪しい人間じゃないって言ってるだろ!!」









Next   Back
***********************************************
アトガキ(懺悔)
はい、微妙なところで切っちゃいました。
それにしてもダメですね。
予想外の人がバンバン出てくる。
この時点でルックは出すつもり昨日までは無かったのに。
04/7/12