深い深い森の中 俺は走っている。 とにかく走っている。 只ひたすら我武者羅に走っている。 事の元凶である鬼の追っ手から逃げ切るために。 あぁ…やつの足音が背後から迫ってくる―――――。 脱走劇 ザザザザザ 俺は走るひたすら走る ドドドドド 騎乗した追っ手から逃げるためにひたすら走る 「だぁ!!しつこいぞそこの赤騎士、いい加減諦めろ!!」 木々の間を縫いつつ、叫びつつ。 後を見ると器用にも木々の間を騎乗しつつすり抜けて追いかけてくる赤騎士が見えた。 「って森の中で馬とは非常識な!!それ以前に徒歩の人間を馬で追い掛け回すな!!」 誰かに見られたら誘拐犯と間違われるぞ。 大丈夫ですよ、ここには我々以外誰もいませんから。 そいやそうだな。 「、獅子はか弱い獲物を捕らえる時でも全力を出すんですよ。」 その言葉通り後から迫ってくる蹄の音は木という障害物が大量にあるにもかかわらず少しずつ俺に迫ってきている。 「お願いだから出さないで現実の雄ライオンのごとく怠けていてくれ。是非とも、俺の自由と睡眠時間のために。」 「無理ですね。」 にっこり 一刀両断されたよ。 しかも絶対にエセ臭い笑顔を浮かべてるな…必死に走ってるから後ろは見れないけど。 「さて、そろそろ遊びは終わりにしましょう。私が飽きた事ですし。」 そう後方から言われて前を見るとそこは丁度5Mほどの高さの崖で、大きな川が流れている。 どうやら赤騎士――カミューは俺をここに追い詰めるように追いかけてきたらしい。 そして崖が近づいたからこそ終了の声をかけたのだろう……飽きたというのが本音かもしれないけどな。 「…カミューの暇つぶしに付き合った礼として見逃してくんない?」 「却下ですね。そんなことをしたらシュウ殿に私が仕事を押し付けられてしまう。」 俺が騎上のカミューを上目使い(涙目)で見上げて頼み込んでもやっぱり一刀両断しやがった。 昔はものすごく効いたのに 「子供の頃ならばいざ知らず、15にもなったに上目遣いで頼まれても全然効きませんよ。」 えぇ?カミュー俺の心の中覗いた!? 実はカミューって超能力者!? 「、考えていることが全て顔に出ていますよ。」 「げっ、マジ?」 俺がそう言うとカミューは剣を抜きそれは素晴らしい笑顔で 「私が嘘をつくとでも?」 と、騎上からおっしゃいました。 嘘か… つくと思います とはさすがに言えないよな。 俺まだ人生捨てたくないし。 「さて、もう逃げ道も無いことですしデュナンに帰りましょうか。」 仕事を押し付けられるのは御免ですからね。 俺だったらいいのかよ。 もともとの仕事でしょう? 「確かに…確かに俺の仕事だけどさ、15歳の俺に1日15時間労働させるなよ!!」 そう、俺はまだ成長期を過ぎていない育ち盛りの青少年なんだ!! これ以上睡眠を削られて身長が伸びない要因を増やしてたまるか!! 「大丈夫です、はきっと睡眠時間が足りなかろうが栄養が足りなかろうが身長は伸びませんから。」 「カミューサン、ドウシテ心ガヨメルノデスカ?」 「ですから顔に全部でてますよ。」 あと少し…あと少しの時間でいい。 その少しの時間が有れば俺は… 「時間稼ぎもそろそろ終わりにしませんか?」 そう言いつつカミューは俺を捕まえるために少しずつ近寄ってくる。 あと少し… あと…すこ―――来た!! 「!!」 ソレが来ると同時に俺は崖から飛び降り川の上流から流れてきたボートに飛び乗った。 「じゃあなカミュー親父にヨロシクな〜!!」 「待ちなさい!!」 いや、川の流れに乗っているから待つのは無理だろ。 って馬で追いかけてきてる!! そう思いつつカミューを見上げるとカミューは心配そうな顔をしてこちらを見ていた。 少し胸が痛むが仕方がない。 俺の自由を奪い取るためには多少の犠牲が出ようともっ 「心配するなよカミュー、俺は大丈夫だからさ。」 さすがにカミューの馬も今まで走り通しだったためばてたらしく少しずつ俺とカミューの距離は広がっていく。 思わず俺はカミューに声をかけた。もう聞こえるかどうかも解らない距離だけどどうしてもカミューに言いたかったんだ。 「だれがの心配ですか!!そんなことより仕事どうするつもりですか!?」 俺じゃなくて仕事の心配かい・・・ 「借りにしといてくれるとありがたいかなぁなんて」 「ちゃんと借りを返してくださいね。」 「もちろん!!だから間違ってもポックリ逝ったりするなよ〜!!」 「…〜〜っっ!!」 なにか遠くでわめく声が聞こえてくるが少しずつ大きくなる水音にかき消され聞き取ることはできなかった。 手を振りながらカミューをもう一度見ると必死の形相で俺の後を指差している。 …後? 必死の形相で俺の後を指差すカミュー。 少しずつ大きくなる水音。 かなり嫌な予感を抱えつつ後ろを振り向くとそこには… 「滝――――っ!!」 滝があった。 拝啓 今日もきっと眉間にしわを寄せつつ書類に目を通しているであろう父へ。 仕事の山に嫌気をさして家出をしてはや1日。ここ数年で溜まりに溜まったストレスを発散した後帰るつもりでしたがもしかしたら一生帰れないかもしれません。その時は天国で悠々自適に暮らしながらこちらへ来るのを待つつもりです。 でもこの年で逝くのはむなしすぎるのでちょっとがんばってみます。 それではお元気で 敬具 追伸:俺が死んだら親父のせいだからな!!呪うからなぁ〜!! Next? Top ******************************************* アトガキ(懺悔) やっとこさ書き始めた連載物のドリ…しょっぱなから男主人公です。 しかも例のあの人の息子です。 …この話だけ見てるとカミュー夢? 2004/7/9 |