「だから俺怪しい人間じゃないって言ってるだろ!!」

とにかくは必死になって叫んでいた。
そしてその努力はあまり実っているとは言えない状況だった。

の叫びの先には褐色の肌をした少女がに向かって弓を構えている。
先程のの叫びを聞いても「それじゃ魔物か?」と言わんばかりの勢いで睨みつけている。


事の起こりはが必死の思いで仮面の男から逃げた瞬間に遡る


















拘束


















うごうご



は村の前でひたすらうごうごしていた。



うごうご



ユーバーにかけられた投網が体に絡まり、はたから見ているとまるで芋虫のようだ。



うご…ぶちぶち



少しうごうごを止めると少し後に紐か何かを切るような音が聞こえ出した。

そして網から抜け出すといきなり叫び始めた

「ぐぁーーーーーー!!あのユーバーとやらいつか会ったら覚えてろよ!!」













なんとかギリギリルックという鬼の魔の手(?)から逃げ延びた俺は転移先で辺りを確認しようと首を回した。


しかしどんなに目を凝らしても見えるのは草ばかり。
しかもものすごいアップで。


………



「もしかして俺倒れてる?」


そう呟いてみても何も返事は返ってこない。
山彦として響かないだけましというものだろう。


「と、とにかく現状把握しないとな。」


俺は現状を並べてみることにした


1、 どんなに目を凝らしても草しか見えない(しかもアップ)
2、 体が動かない
3、 ここどこ?


えっと1の理由はわかっている。
俺が転がっているからだ
で、なんで転がっているかというと理由は2の体が動かないから。
3は起き上がってみないことにはなんとも……


で、2の答え…あぁそうかユーバーにかけられた投網が体に絡まってるんだな。


原因は彼奴か!!


そして俺はさっき誰かが実況していた通りうごうごと芋虫のごとく動き出す。




うごうご




ナイフはどこだ?たしか腰のポーチに入れていたはず。




うごうご




お、これこれコレでっと…




うご…ぶちぶち




切れた!!コレで俺は自由の身だな!!


そして俺は投網から抜け出すと同時に叫んだ


「ぐぁーーーーーー!!あのユーバーとやらいつか会ったら覚えてろよ!!」


そして辺りを見回す。
いや、だって誰かに聞かれていたらちょっと恥ずかしいだろ?


そして俺は見回した先に嫌なものを見つけてしまった。


そこには矢をつがえたままこちらを警戒している褐色の肌をした少女が居た。


俺めちゃくちゃ警戒されてないか?


「あの…ここどこですか?」


て第一声がそれかよ俺


案の定少女は訝しげな顔をしつつ更に警戒を強めた。

そりゃいきなり「ここどこ?」なんて聞いたら怪しいよな。


「えっと俺転移に失敗しちゃって」




嘘じゃない。
断じて嘘じゃない。
ただちょっとばかり言葉を抜かしているだけだ。




そういうと少女は少しだけ警戒を弱めたが相変わらず俺に向かって弓を構えている。


「だから俺怪しい人間じゃないって言ってるだろ!!」
「草原の真ん中でずぶ濡れになりつつ網に絡まっている人間が?」


痛!!


確かに怪しいわな。草原の真ん中しかも晴れの日にずぶ濡れの奴は。
ていうかさ

「見てたんなら助けろよ。」


「あまりにも怪しくて近寄れなかった。」


それもそれでちょっと悲しいな。


「とにかく俺は川に落ちて投網に絡まってやば気なところを転移呪文使って跳んできたから濡れててもおかしくないんだって。」


「お前鉄頭の仲間じゃないのか?」



鉄頭…確かゼクセの騎士がグラスランドのクランの人間からそう呼ばれていたような。
ということはここはグラスランドなのか?


「鉄頭って……ゼクセンの騎士の事か?」


俺がそう言うと少女は1つうなずき更に質問を重ねてきた。


「違うのか?」


「俺はデュナンから来たから違うな。」


だから違う。


そう言うと少女はやっと警戒を解きこちらに歩み寄ってきた。


「警戒して悪かったな。ここはグラスランドのカラヤクランだ。旅人は歓迎しよう。」


そういって少女は俺を村の中に迎え入れようとする。
が、しかし…



カラヤはまずい。
ルシアさんがいるから俺のことが一発でばれる。
=デュナンへ強制送還
=仕事の山と赤騎士の黒い笑顔がまっている。



い・や・だ


「いや、ありがたいけど俺はこのままゼクセに行くよ。荷物とかほとんど流されたしな。それにもともと目的地がゼクセだったんだ。」


そう言うと少女は少し眉をよせつつ(きっとゼクセが嫌いなのだろう)すこし待ってろと言い村の中へ入っていく。

少しして戻ってきた少女の肩には荷物があった。

「これを持っていけ。荷物が流されたなら食料も少ないんだろ?ついでに武器も持って行け。」

そう言うと肩に担いでいた荷物―食料などと剣―を俺に手渡した。


「いいのか?こんなにしてもらって。」
受け取りつつ俺が言うと少女は笑いながらこう言った。


「私が気に入ったからな。それじゃ気をつけろよ。」
それだけ言って少女は村の中へと入っていく。


それを見た俺はその背中に思わず叫んでいた。


「俺の名前はだ。また会おうな!!」



そしてそういうと俺もまた何も言わずに村から離れだした。
というか、本名告げれなくてごめんなさい。
だっていったらルシアさん経由でデュナンに情報が伝わりそうでさ…


遠くから「アイラ」という声が聞こえたような気もしたが結局俺はそのまま歩き続けた。


さてと、ゼクセに迷わず着けるかな俺。











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アトガキ(懺悔)
書けない書けないなぞと3話目にして言ってる俺ってどうよ。
ごめんなさい。なんだかんだ言って俺の実力はこんなもんです。