どこまでも続く草原




障害物も無く心地よい風が吹く




遠くを見やれば地平線が続き




地平線がどこまでもどこまでも続く




俺は大地に横になり太陽を全身で受け止める




肩ほどの髪も大地に絡ませ




心の奥底からあふれ出るその思いをかみ締める




(この年で迷子かよ)









迷子














だってさ、よく考えてみろ。
コンパスも地図も無しに草原なんて歩いていたら絶対に迷うって。



どんなにがんばっても最低コンパスは必要だ。
せめて切り株か何かでもあれば方角はわかるが、ここには木は1本もはえていない。



とにかく上記から解るように俺は道に迷っていた。
いや、ここは草原で道らしき道は無いから只迷ったと言うべきか…。
いやいや、もしかしたら草丈が高いせいで道が見えていないだけかもしれない。



とにもかくにも俺は道(?)に迷っていた。



そしてつい先程道を探すのに嫌気がさし、地面に寝転んだところだ。



俺を照らす太陽は心地よく(少々当たりすぎて熱い)
背中の地面はひんやりと涼しく(少々濡れているが気にしてはいけない)
この草原に生息する生物が人見知りもせずに戯れてくる(モンスターに襲われているだけとも言う)



最初の2つはともかく最後の1つは片っ端から殴り倒してゆくことにより近づかなくなってさっぱりした。(そのかわり辺りは血臭がたちこめる)



「…………………」



「…………………」



「現実逃避してる場合じゃないよな。」



俺はむくりと起き上がると肩をグルグルと回した。



バキバキ…ミシッ



「……運動不足だったからなぁ。」



関節が鳴る音に思わず数日前の出来事を思い出してしまった。





そう、あれは朝執務室に入ったときのことだ。



「あぁ…だる。」



俺はいつも通り欠伸をしながら執務室に入っていった。
あの時は最低睡眠時間記録更新の日で2週間で7時間しか寝ていなかった。
今思うと良く生きていたと思う。
とにかく俺はその頃1日の睡眠時間が1時間も無いという生活を送っていた。
当然、起きている時間は生理的欲求にあてる時間を除いて執務室に篭って仕事をしていた。



「そろそろ死ぬぞ俺。」



そう言いつつ扉を開けた俺の目に入ってきたのは



デスクの上にできた書類の山だった。
いや、もうアレは山とは言えまい。
塔だ、塔。
タワーだ。
しかもそのやたらと高い塔は3本もある。

昨日というかついさっき休む時はデスクの上には書類の小山が1つ程で今日1日がんばれば10時間は休めるだろうという量だった。



なのに…たった数十分でどうやったらこんな書類の山ができるのだろう。



最近の疲れが一気に出てきたのかおぼつかない足取りでデスクと対になる椅子に座ると俺は諦めて書類をめくりだした。




ピラ




『壁の修繕についての予算案(カミュー)』




ピラ




『水源の確保の方法とそれにかかる費用の試算(カミュー)』




ビラ




『先日あった鍛錬所破壊の修繕について(マイクロトフ)』




ビラっ!!




『次回会議の議題内容の確認(カミュー)』etc…




なんか俺に恨みでもあるのか騎士2人組み、特に赤騎士!!



なんでこんなに予算案とかについての書類が多いんだ!?
つか鍛錬所壊すなよ!!
それよりも次回会議って今日だろ!!しかも2時間後!!
それに揃いも揃って書類溜めすぎだ!!



やばい、本気で頭がクラクラしてきた。
いっそのことこの書類全部燃やすか?
いや、それだと灰が残る。
じゃあどうする?
川に流してもいつ見つかるか解らないし
湖に沈めるには箱が必要…
てかこんな大荷物持ってたらかなり怪しいって。
ならあの2人を闇に葬り去るか
ダメだ。葬り去ろうが抹殺しようがこの書類は消えない
それ以前にあの2人(特に赤騎士)をヤれるとは思えない。
どうする?
どうする?





家出だ。
そうだ逃げちまえ
大体なんで15歳、育ち盛りの青少年である俺が成長に必要不可欠である睡眠時間を削ってまでこんなことをしなくちゃいけないんだ?
理不尽だろ?
理不尽だよな?
大体、普通の日でも1日の労働時間が15時間って明らかに働きすぎだろ。
しかも給料は出ないときたもんだ。
でたとしても小遣い程度。
理不尽だ。
理不尽に決まってる。




決定
俺、今日家出します。



実は前々から計画はしてたりするし。
準備もある程度できていてあとは逃げるだけだったりするし。



そうだ、俺は自由になるんだ
あんな理不尽な大人どもなぞ知ったことか。





そして俺は以前からちょっと計画して見たりしていた行動通りに家出を開始した。
で、その時の話は1話で話した通りだ。



「って、また現実逃避してたな。」



あぁ、太陽がひたすら眩しいよ。



………太陽?



俺はおもむろに立ち上がり自分の影を見てみる。



おれの後方に影はできている。
て、ことはだ。
太陽に向かったとき俺の右手は大体

左手は
西
たしか昔見た地図だとカラヤからゼクセは西の方でブラス城も大体西の方角だったはず。



なんで俺こんな簡単な事に気づかなかったんだろう。



ちょっと気落ちしつつ少女から貰った荷物を持つと俺は西(と思われる)方向に向かって歩き出した。



とにかく今はブラス城を目指そう。
そしてそこで地図とコンパスを買おう。
宿でゆっくりと休もう。



そう思いつつ俺は脚を進め続けた。



サイフの底に穴が開いていて残金が残りわずかだという事に全く気づかないままに…








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アトガキ(懺悔)
はい、ついに名前変換が一切出てきませんでした。
だって同行者が誰も居ないから…回想にも誰も出てきてないから
まぁ、とにかく主人公は青い兄さん並みに不幸だということが判明
しました。比較対象はナッシュでも可。