彼の第一印象は凪いだ水面だった。 しかし、彼の瞳を見つめるうちに俺は気づいた かれは凪いだ水面ではなく炎だと 炎は炎でも静かなる炎だ たとえるならば…そう、旅人の道を照らすランプの炎のような 日のあるうちは決して目立たないがいざ日が沈み道を照らすものがなくなると輝きだし、道を照らす そしてまた日が昇ると身を潜める それが今も俺が抱いている彼に対する印象だ 運命の 俺はボルスを犠牲にした後ゼクセを目指して歩いていた。 途中襲い掛かるモンスターは新しく買ったロッドで吹き飛ばす、もしくは叩き潰してく。 このロッドがまた掘り出し物で何でできているのかはわからないがとにかく硬かった。 店員の話によるとひいらぎとうさんだかゴーストツリーが使われているとか、先端についている赤くてでっかい水晶玉みたいなのはひいらぎこぞうの赤い部分を集めたものだとか… なんかやたらとひいらぎシリーズで埋め尽くされてるような気もしないでもないが… もしかしてこのロッドひいらぎ一家の集合体? ……… これ以上このことについて考えるのはやめておこう。 とにかくこのロッドは家族の絆だかなんだか知らないけれどとにかく固い。 おかげさまで体力がそんなにない俺でも簡単にモンスターを倒せる。 そこ、ブラス城につくまでモンスターをひたすら潰してただろとか言うな。 あのときは火事場のくそ力とか起死回生の一発というか… とにかくあのときは生死がおもいっきりかかっていたからできただけで今やれといわれても絶対にできない。 そうこうしているうちに気がつくと俺は大きな街についていた。 たぶんこれがビネ・デル・ゼクセだろう。 それにしても潮風が気持ちいい。 人々にも活気があって旅人の俺ですらどこか気持ちが浮つく。 とにかく今日の宿を決めなくては。 そして俺はパンパンに張った皮袋(つくろい済み)を片手に宿を探すため歩き出した。 カラン やっと見つけた宿の扉を開くと耳に入ってきたのはやたらとうるさい酔っ払いの声だった 「だからそんなにがばがば酒を飲むんじゃねぇ!!」 「おぬしが女に金をつぎ込むことに比べたらまだましじゃろう。」 「そうだね。酒は私らの糧になるんだからかなりましだね。」 「だから金がないから飲むんじゃねぇって!!」 なんだかどっちもどっちのような気がするが… そう思いつつ俺はとりあえずカウンターの席につき腹ごしらえをすることに決めた。 「パンとサラダ、それにフレッシュジュースお願いします。」 メニューを一通り見終えたあとカウンターの中にいる店員に話しかけると店員は気持ちの良い返事を返した。 うん、店員の教育がいいなここ 一人旅をするにはまだ若い俺をみても怪訝そうな顔をしないし。 「お待たせしました。」 どうやら結構の間おれは考え込んでいたらしく、気がつくと店員が俺の目の前に注文した食べ物を並べていた。 皿にきれいに盛り付けられたサラダはとても瑞々しく、フレッシュジュースも口当たりが良くとても飲みやすいしパンだって焼きたてなのか暖かいうえに柔らかくふかふかしていて思わず顔に笑みを浮かべるほどだ。 そして俺が至福の時を味わっていると…… 後頭部にやたらと強い刺激を感じた。 むしろ何かが高速で俺の頭にぶつかってきた。 ガゴン… 静まりかえった店内にジョッキが床に落ちる音が響く というかさ、ガゴンってジョッキじゃありえないだろ。 「っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 呻きながら頭に手をやるとなにかぬめっとした感触がする。 嫌な予感を感じつつ手を目の前に持ってくるとその手は嫌な予感のとおり 赤く染まっていた 「おい!!なにやってんだよじいさん!!ジョッキを投げるなんてあぶねぇだろうが!!」 そうか、投げたのは紫色の服を着た爺さんか 店員が慌てて俺の怪我の治療をしているらしく、頭に何かが(たぶん包帯)巻かれていくが怒りのあまり俺はお礼を言う余裕が無かった。 「はっ!!よけることを見越して投げとるから安全に決まってるじゃろう。」 俺に当たってる時点で安全じゃない 「まぁあれに当たるぐらいノロマじゃないからな…ってそういう問題じゃねぇだろ!!」 ノロマで悪かったな 店員がなにやら青ざめた顔で遠ざかっていくが…どうしたのだろう。 まだなにやらギャアギャアわめいてる声が聞こえてくる 謝ろうという気すら起きないのかあの中年以上のおやじどもは そうか…謝る気はないのか じゃあしょうがないな 無理にでも這いつくばって謝ってもらおうか? 今きっと俺の背後を見たら真っ黒いなにかが立ち上っていることだろう。 その証拠に店員がものすごい勢いで店の隅に避難している。 まぁそんなことはどうでもいい。 今俺は目の前にいる中年親父どもをはいつくばらせひたすら謝らせるという崇高なる使命がある。 すぅっ 俺は右手を持ち上げると紋章に集中しはじめた。 親父どもはいまだに俺の存在に気づかずぎゃあぎゃあとわめき続けている。 今ならまだ間に合った(かもしれない)のにな… そして最高潮まで高まったところで力を解放するための言葉を俺は紡いだ 「切り裂き」 真空の刃が発生し、目の前の親父どもを切り裂く。 切り裂く 切り裂く ……… 力込めすぎたかも。 ま、いいか 呪文の効果が消えるころにはずたぼろの親父どもが転がっていた。 もちろんこの親父ども意外にダメージを受けたものは何も無い。 あるとすれば腐れ親父どもの血で濡れた床ぐらいか。 コツ…コツ… 倒れている親父どもにゆっくりと近づくと俺は重なっている親父どもを勢い良く踏みつける。 「っぐえ」 何か蛙を踏んだような音が聞こえたような気がするが気にしない。 気にするどころかにっこりと微笑みつつ更に体重をかけ俺は2人に話しかけた。 「あんたら、人に怪我させといてわび一つ無いってどういうことかな?」 「け…けがって?」 肺が圧迫されて苦しい中紫の親父の下にいる若い方の親父が俺に質問してくる。 うん、いい度胸だ。 「あんたがよけたジョッキが俺の頭にぶつかったんだよ。」 若い方の親父(以下若親)は「ゲッ」と呻くと慌てて紫色の親父(以下紫親)を起こしにかかった。 「おい!!ジジイ起きろ!!あんたのせいでえらい目にあってんじゃないか!!」 「うぅぅ…何があったん「とにかく謝れ、俺らを足蹴にしてる奴に謝れ!!」 「なんでわしに攻撃してきた奴に謝らねばならん「うわぁぁぁ!!この馬鹿ジジイが!!」 とにかく紫親は謝ることを知らないと見た。 まぁ、若親は見逃してやろう。良く考えたらこいつ何も悪いことしてないし。 「じゃぁ、もういっちょいってみますか?次は大爆発で。」 「俺を巻き込むなぁ!!おれは何もしてねぇ!!」 「大丈夫大丈夫、俺精密Sだから。んじゃ逝ってみよう。」 そういうと若親は安心したように紫親に哀れみを込めた目でつぶやいた 「…往生しろよジジイ。」 「ちょっと待て、わしは何がなんだか」 「問答無用。つまりは質問には応じません」 俺はニッコリ微笑みつつ更に集中を高めていく。 今度は左手にある紋章が輝きだす。 そしてまた最高潮にまで高まったところで俺は言葉を紡いだ。 「大 爆 発」 どぉん ものすごい音と共に炎が燃え立つがやはり店内にダメージを与えることは無い。 なにせ精密Sだから。 そして炎も治まり爆発の中心部を見ると黒焦げになった紫親が倒れ伏していた。 まぁ、謝らせることはできなかったけどとりあえず地に伏せさせることができたからいっか。 黒焦げの親父のそばにしゃがみこみ、そこら辺にあった棒でつついてみるとかすかに反応がある。どうやらまだ生きているらしい。 「連れがすまなかったねぇ。」 まだ棒でつついている俺に女性が声をかけてきた。 振り向いて顔を確認すると俺が入ってきたとき親父2人組みといた女性で、女性に言うのはなんだけどとてもかっこよい女性だった。 「いえ、俺もちょっとやりすぎましたし。」 立ち上がりつつ俺がそう答えると女性は「そうかい?」といって笑った。 …実は全然思ってないけどな 「あたしの名前はクイーンあんたの名前は?」 「俺の名前はって言います、よろしく。」 そう言いつつ差し出した手をクイーンさんは握り俺も握り返した。 うん。この人はいい人だ。 そのうち復活した二人組みも交え、俺たちは結構話しこんだ。 そしてある程度話し込んだ後、若親−エースが立ち上がると 「そろそろ大将を起こしてくる。」 と言って2階へと上っていった。 「大将って誰です?」 そう俺が問いかけると紫親−ジョーカーが酒を飲みつつ答えた。 …そろそろ酒はやめといたほうがいいような気がするけどな 「わしら12小隊の隊長でな、なんとなく大将とよんでおる。」 「まぁ、名前はゲドって言うんだけどちょっと無口でね。」 「へぇ。」 そんなことをしているうちにエースが戻ってきた。 しきりに後ろにいる誰かに話しかけているが、俺は階段に背を向けて座っているため姿を見ることができない。 しかし、エースの話に「あぁ」とか「うむ」しか言わないところを見るとクイーンさんが話していたとおり無口ならしい。 そしてゲドさんは俺がいるテーブルで立ち止まるとじっと俺を睨んできた。 いや、睨んでいるというよりは「誰?これ?」といった視線だ。 「はじめまして。俺っていいます。先ほどジョーカーさんとエースさんにお世話になりまして。」 そう言うとジョーカーとエースは顔面蒼白になりクイーンさんはうつむいて肩を揺らしだした。 「…そうか、すまなかったな。」 対するゲドさんは3人の様子を見て何があったのか悟ったのか俺にそういった。 「いえ。」 「ところでゲド、ちょっといいかい?」 「なんだ?」 やっとのことで笑いの発作が収まったらしいクイーンさんがゲドさんに尋ねるとゲドさんは相変わらずの無表情で……いや、言葉のとおり「なんだ?」と言う顔で問い返した。 そしてクイーンさんは爆弾を投下した。 「を一緒に連れて行かないかい?」 Next Back ************************************************************ アトガキ(懺悔) ふっまた変なところで切っちゃいました。 というか、なんか今回やたらと手が止まって困りました。 つまりは困難を次回に先延ばしw はぁ、それにしても(私的に)今回は長かったよ。 |