俺は朝早くに歩いていた




まだ朝もやが立ち込め、太陽の恩恵が地に届いていないため辺りは薄暗い




ふと何かの気配を感じたような気がして振り返ると




甲冑を身にまとった人影がこちらを見ている




まさか、とは思ってはいたが本当にいるとは思わず俺の背に汗が流れる




何故ばれた?




俺は決して今日、この日の行動を匂わせる行動をしていない




逃げなければ




そう思い走り出すと甲冑を身にまとった誰かも走り出す。




走る、走る、走る




そしてようやく出口にたどり着くと同時に俺は愕然とした




甲冑を身にまとった人物が6人出口に立っていたからだ




もう逃げ道は無い…




そして俺は捕まった















芝刈りへ



















俺がおとなしくなると同時に甲冑を見にまとった者の中で唯一の女性が俺に笑顔で問いかけた。
その女性―クリスはあまり笑顔を見せないだけにその笑顔にちょっとした恐怖を感じる。




あの後、俺はパーシヴァル推薦により期間限定でブラス城で学術指南役ということで働くことになった。
仕事の量は多いものの、昔の…デュナンにいた頃の仕事の量に比べればたいしたことは無く楽しく働いていた。
そしてパーシヴァルつながりでクリスを筆頭とする騎士7人(見習い1人含)と知り合った。
友好関係に問題は無くやはり楽しく働き、旅の必需品を次々とそろえていったのだが…働き始めてから約1ヶ月後に話は少し変わってしまった。




「で、どこへ行くんだ?」
「ちょ…ちょっと芝刈りに。」
「…もっと良い言い訳があるだろうに。」




まったくだ


なんでよりによって一発でばれるような嘘をつくんだ俺。
あまりにも…あまりにもうそ臭すぎる




「あぁ!!芝じゃなくて薬草だ薬草。」
「いくらなんでもそんな間違えはしないだろう。」


今度はあきれたようにボルスがため息をつきつつ答える。
うん。できれば俺もそちら側であきれたいよ。




「俺の故郷だと薬草を芝って言うんだ。」
「えぇ!!そうなんですか!?初めて聞きました。」
「へぇそんな地域もあるんだなぁ。」




おれがそう言うとレオとルイスがしきりに「良いことを聞いた」とばかりにうんうん頷いている。
何故か今ので納得してしまった。
というかされてしまった。
こんどは俺もあきれつつ回りを見ると2人以外の全員があきれた顔で俺と2人を見ている。
俺も同類ですか?




「たとえそれが本当だとしても何故薬草を取りにいくだけなのにそんな重装備なのですか?」
「ほら、いきなりモンスターに襲われたら大変だし。」
「薬草取りに野宿の装備は不要では?」




あきれつつもサロメは俺をここぞとばかりに問い詰めてくる。
たしかに不要だよ。
俺も要らないと思うさ




「いやぁ数日がかりでここらの薬草を調べようと思ってさ。」
「で、なんでこんな時間に?まだ誰も…鶏すら起きてないぞ?」




ニヤニヤ笑いながらパーシヴァルが俺に問いかけてくる。
ごめんなさい、お願いだからニヤニヤするのはやめてくれ。
初めて会ったときの事を思い出して胃がキリキリ鳴きはじめるから。
意外…というか当然というか
あの時の事は俺にとってトラウマになったらしい。
さすがの俺も


「ねぇおかあさんなんで騎士さまは男の人の肩に手を置いて笑ってるの?」
「しっ!!見ても指差してもいけません。さ、行きますよ!!」
「えぇ〜やだ〜もっと見てるぅ!!」


というやり取りがされた時は羞恥で死ぬかと思った。
それよりおかあさん、それ聞こえてますから。





「どうやらこの地域には日が昇る前でないと取れない薬草があるらしく」
「エルフの私の前でそういう嘘はいかんな。」




そうでした。ロランさんはエルフでしたね。
そしてお願いですから俺に向かって矢をつがえるのはやめてください。
寿命が5年縮みますから。エルフと違って人間の寿命はそんなに長くないんですよ?




「で、何故こんな時間に誰にも何も言わずに出て行く。」




結局そこに戻るんですかクリスさん。
原因はあなたなのですがねぇ。




昨日になってふと思い出したのだが昔俺はクリスに会ったことがある。
あれは確かゼクセン建国記念舞踏大会だったはず。
当時まだ幼かった俺は父につれられて大会の見物をしていた。
で、そこで会ったのがクリスとリリィだった。
会ったというよりは見たというほうが正しいけど。
その時クリスとリリィが乱闘を起こしているのを見て確か俺は
「とうさま、舞踏会とはああやって乱闘を起こすことなのですか?」
とか聞いた覚えがある。
うん。それだけひどかったということだ。
俺の中での恥ランク上位にこの出来事がランクインしていたため昨日までおれはこの出来事を記憶の引き出しの奥深くに封印していたはずなのだが、なぜかふっと出てきてしまった。




で、慌てて逃げ出そうとしたのだが何故か感づかれ今にいたる。
クリスが俺のことを知っているとは限らないがもしかしたら知っているかもしれない。
と、いうわけなのだ。




「で、何故こんな時間に誰にも何も言わず逃げるように出て行く?」




さりげなく今「逃げるよう」がプラスされてましたよ。




「…父が急びょ「嘘はつくなよ




ごめんなさい。その名前自体嘘です。




「じ…じつは」




そして俺はついに犠牲者を出す決心をした。
背に腹は変えられない。




「ここ毎日セクハラを受けていて…それはまだ我慢できたのですがついに夜つけられるようになって…!!」
「なに!?誰だそんな変体行為に及ぶ愚か者は!!」




ごめんなさいクリスさん。
本気で俺を心配してくれているのはわかっているけど…わかっているけど
あの仕事の山をもう見たくないんで。




「それは…」
俺はそう言いつつボルスをチラリと一瞬見る。
そしてその俺の視線に気づいた騎士4名はいっせいにボルスを睨みつける




ボルス、俺の幸せのため犠牲になってくれ




「い…いえません。」




その言葉で更にボルスを睨む目つきがきつくなる。
ボルスはいったい何事かとひたすらあたふたしている。




ありがとうボルス、その不審な行動で俺の言葉に信憑性が増したよ。




「見損なったぞボルス。まさかお前がそんなことをするなんてっ!!」
「騎士として人間として最悪な行動だなボルス。」
「ボルスさんいったい何を考えて…いえ、やっぱり言わないでください。今ここでおぞましい妄想を語りだしても困るので。」
「……」
クリス、パーシヴァル、サロメ、ロランが次々とボルスを責めだす。
もっともロランは一言も話してはいないが無言の圧力というもので押しまくっている。




そろ…そろそろ




そして俺は皆がボルスに注目している隙に外へと歩き出す。




そろそろ




そしてある程度集団から離れたところで




ダダダダダダダダダダダダッ




走り出した。




今度こそ後ろを振り返らずひたすらひたすら走り続けた。




そしてそんな俺にボルスは気づいたものの、ボルスを糾弾している周囲のメンバーに押され結局意見が通ることは無かった。




そして俺がいなくなったことに気がついたのは鶏が起きだし、朝一番の鳴き声を披露するそんな時間帯だったらしい。(後にパーシヴァルに会ったときに聞いた。)




そして俺はそんな魔の手から逃れひたすらゼクゼへと向かっていた。




よくよく考えるとクリスはゼクセンの騎士で町でばったり遭遇!!という可能性もあったのだが何故かこの時俺の脳はそういうことを一切考えていなかった。




そして俺はそこで運命的な出会いをはたす。



言っておくが別にそれは運命の恋人。なぞというものではない。











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アトガキ(懺悔)
というわけで第7話でした。
いきなり時間が飛んでます。1ヶ月も飛んでます。
しかもそのくせ話がまた微妙に進んでないし。
ダメじゃんねぇ?