「事務処理は得意か?」 「はい?」 それが俺の運命を決める言葉だった。 事務処理専門(予定) 「あの、どういう意味ですか?」 「事務処理は得意か?」 「……人の話を聞いてますか?」 「……」 「…得意、ですよ。」 「そうか。」 「そうです。」 いったいなんなんだこの会話は。 さっきからこの人は俺が事務処理が得意かしか聞かないし 質問を返すと黙り込むし 挙句の果てには答えても「そうか」で終わりって…。 「じゃぁ決まりだね。」 俺がちょっと思考の海に溺れかけていると唐突にクイーンさんが口を開いた。 「決まり、って何がですか?」 「あんたの同行だよ。」 ちょっとまてぃ!! 「俺そんなこと了承した覚えがまったく無いんですけど!!」 「よっしゃっ!!これでやっと会計作業から開放される!!」 「何で俺があんたのための人身御供にならなきゃいけないんですかっ!?」 事務処理は…雑用係はもういやだっ!! それが嫌で家出してきたのになんでまたやらなきゃならないんだよ!? 「ふむ、得意な者がやったほうが楽じゃな。」 「何気にさっきのことまだ逆恨みしてるだろあんた!!」 ちくしょうっ!! いつまでも根に持ってるなよっ自業自得なんだからさ!! 「あともう一人メンバーがいるから後で紹介するよ。」 「人の話は聞いてください!!そして勝手に決めないでください!!」 いじめ・・・いじめか?これはっ 「大体俺は一緒に行くなんて一言も言ってないんですよ?なのになんで一緒に行かなくちゃいけないんですか!?しかも事務処理?俺は休みが欲しくてこんなところにいるのに何で休み中(強奪)に仕事をしなくちゃいけないんですか!?それにですね、俺は俺に怪我をさせて謝りもしない棺おけに片足突っ込んだ爺なんかと一緒に旅なんかしたくないんですよ!!」 俺がそこまで言い、辺りを見回すと何故か皆俺に注目して驚いた顔をしていた…失礼訂正、約1名を除き驚いた顔をしている。 その約1名は怒りのためかすこし拳が震えている。 「誰が棺おけに片足突っ込んだ爺じゃ!!」 「アンタだなんて一言も言ってないだろ!!それともなにか?アンタは棺おけに片足突っ込んでる自覚がありまくりか?じゃなきゃ自分のことだなんて言わないよな?」 「うるさいわ小童が!!」 「その小童に叩きのめされたのは誰だ?もうろく。」 「誰がもうろくじゃ!!わしはこのようにシャキッとしとるわ!!」 「酒精でふらふらしてるんじゃないのか?年なんだから内蔵に負荷を与えんなよ。」 「わしはまだまだ現役じゃ!!」 「あんまり怒鳴るなよ、血圧が上がってぽっくり行くぞ。塩分も控えめにしとけよな。」 「年寄り扱いするでない!!」 「だいたい人のこと小童だなんていうやつは大体爺か婆なんだよ。わかったらおとなしく日当たりのいい部屋で入れ歯の手入れでもしてな。」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」 「それじゃぁな。」 俺はそういって地団太を踏んでいる爺を見捨てて2階へと上がっていく。 それにしても疲れた。 なんで身体を休めるためにあるはずの宿屋でこんなに疲れなくちゃいけないんだ? それにしてもまいった まさか仲間になれと言うなんてなぁ。 つかさ、あいつらいったい何者? 普通の旅人になんか絶対に見えないし かといって騎士団とかそういうタイプでも無いし… 一番近い空気は青いのとか熊かな。 と言うことは……傭兵か。 ここらで傭兵を使っているところというと ゼクセンはまずありえないし 傭兵みたいな下賎なものを誰が使うか!!みたいなこと言いそうだしなぁ。 グラスランドもありえない。 あそこはきっと傭兵を雇うぐらいなら自分で武器を持って戦うな。 じゃぁ……ハルモニア、か。 たしかカレリアあたりに辺境警備隊とかいうのがあったはず。 ハルモニアかぁ。 できればかかわりあいたくないな。 俺の身元がばれるとなんかいろいろと厄介そうだし、なにより親父にばれるのは絶対に避けたい。 あと……なんかアルベルトがいそうな予感もするし。 つか俺がハルモニアに世話になったりすると外交問題とかでてきそうだなぁ。 で、連れ戻された後にまた書類の塔が出来上がると。 ……… 明日にはここを引き払おう。 んでもってあいつらから逃げ切るしかない。 勝負は明日の朝か…… そして次の日の朝 俺はブラス城の時と同じようにまだ朝もやが立ちこめ、ニワトリすら鳴かない時間帯に路地を走っていた。 なにやら後ろから3人分の人の声と4人分の足音が聞こえるが気にしない。 とにかく街の出口までひたすら走っていた。 「待ちな!!」 「誰が俺の身代わりを逃がすか!!」 「止まらんか小童!!」 「………」 なんでこの人たちもクリスさんと同じように気づくんだ? というか俺はこのままどこまで逃げればいいんだろう… このままだときっと街の外に出ても追ってくるぞっ!! とにかくもっとスピードを上げないとっ そう思い俺が全力で走り出そうとした瞬間 ガスッ ガスッ という音とともに矢が俺の目の前に突き刺さった。 誰だ!? というかなんで俺狙われてんの!? 濃い霧の中下手に動くこともできず立ちすくしているとついに後ろの4人に追いつかれた。 「ハァ、ハァやっと捕まえたぜ。」 「ハァハァハァ、逃げ足の速さだけは一人前のようじゃな。」 「あんたもう一回紋章くらいたいんですね。」 「ハァ、それにしても足が速いねぇ。」 「…………。」 ちょっとまってくださいゲドさん。 なんであなたそんな重装備で走ったのに息切らしてないんですか? …いや、よく見ると昨日より呼吸の回数が多い。 意地っ張りですねゲドさん。 「さてジャック足止めありがとうね。もう出てきていいよ。」 クイーンさんがそうつぶやくとでっかいボウガンを担いだ金髪の青年が霧の中から出てきた。 「コレが昨日言ってたもう一人のメンバーだよ。」 「……ジャックだ。」 「よ、よろしく。」 したくないなぁ 「もう昨日みたいには逃がさないからね。それにしても昨日はまんまとやられたよ。まさかあんな手で逃げるなんてねぇ。」 「頭だけが取り柄ですから。」 「頭でっかちの小童が。」 「そう言えば紋章、喰らいたいって言ってたなぁ、さっき。」 「昨日とだいぶ態度が違うのう小童。」 「尊敬できない人間に敬語を使ったって無駄だしな。敬って欲しかったらそれなりの人間になってみせろや。」 俺が全開の笑顔でそう言うと爺は急に固まり何も言わなくなった。 ハッ腰抜けめ 「さて、その話はいいとして一緒に来てくれるね?」 「拒否権はどうせ無いんでしょ?」 「まぁね、それにしてもやっとこの隊も財布がうるおうねぇ。なにせ前会計が無能だったからね」 「俺よりできないやつが言うことじゃねぇだろうが!!」 「うるさいよエース。」 クイーンさんはそう言うと剣の鞘でエースを小突きだした。 そして俺はその光景を眺めつつ思った。 ゲドさん、いつの間に了承したんですか? ジャックさん、俺に向かって矢を放ったことまだ忘れてませんからね。 そしてこの時俺はふとあることが脳裏に浮かんだ。 結局俺はどこに連れてかれるんだろう。 旅はまだ始まったばかりのようだ。 Next Back ************************************************************* 久しぶりの更新です。 遅くなって申し訳ないです。しかも話が全然進んでないし。 いや、自分で書いといてなんですが終わり方が最終話っぽい。 ふふふふふはやく話を進めたいなぁ。 2004/9/3脱稿 |