地震国である日本では、地震に備えることが欠かせません。現在お住まいの建物の耐震性能を把握し的確な補強をすることで、長く安心して住み続ける事が出来ます。
【耐震診断】をするには費用がかかることや、診断を行っても不安が募る一方ではと、ためらいを持つ方もいらっしゃいます。そこで、実際の耐震診断から改修までの流れ、それにかかった費用を実例でご紹介します。また、新築における【免震】についても解説していきます。
耐震診断・耐震改修とその費用(1)
築35年の木造2階建て無落雪屋根の住宅です。青森市の耐震診断補助を活用して耐震診断を行い、その結果を基に耐震補強工事を行いました。診断の総費用は約20万円で、そのうち青森市から13万円の補助金がでました。
補強工事費用は、断熱材の追加や内装材の張替えを含めて約150万円です。今回の建物は図面がしっかり残っていましたので、診断を手早く進めることができました。
耐震診断では、床下・天井裏の状況確認を行い、柱の傾きなども測定します。これは床下の状況を見ているところです。
天井裏にも上がって、構造材や断熱材が傷んでいないかなどをチェックします。
振り子のような器具を使って、和室の柱の傾きを測定しているところです。
調査結果を基に、耐震診断報告書を作成します。報告書は約25ページで、構造計算によりこの住宅の耐震性能が算出されます。
この建物の診断の結果は「倒壊する可能性がある」となりました(ちょっと表現がきついですが・・・)。この結果を受けて 耐震補強計画を行い、補強工事をしていくことになりました。
耐震補強(耐震壁を追加して地震に対する安全性を高める)を行うことにより 「一応倒壊しない」レベルまで引き上げます。こちらのお宅では、日常生活を営みながら工事を進められるよう、補強は押入れや廊下の壁を補強していく計画としました。
写真は押入れの壁をはがしている状況です。
骨組みを露出し、新たに筋かいを追加し、金物で補強していきます。【筋かい+金物】により、地震に抵抗する壁が出来ていきます。
補強工事のついでに、断熱材の追加も行いました。冬場、和室の畳面がかなり冷たいので、スタイロフォームで床下に断熱を行いました。
耐震診断調査を行うと、的確な補強を行うことが出来、場合によっては予算を削減することも可能です。医療機関で行う【健康診断】に似ていますね。診断をして、疑わしいところを特定し
的確な治療を行っていく。闇雲に治療しても的外れの場合もあります。限られたご予算のなかで、的確な調査・工事を行うことが大切です。
耐震補強計画は、2・3日で出来るような簡単な内容ではなく、約2週間はかかります。セールスマンの様に自宅に訪問してきて「これは危険ですね〜、すぐ補強しましょう。」などというのはまず信用できませんから要注意です。ぜひ設計事務所にご依頼ください。
耐震診断・耐震改修とその費用(2)
築30年の木造2階建て勾配屋根の住宅です。この建物では、リフォームと合わせて耐震診断調査を行い、地震に対する強度確認を行いました。リフォームでは、壁をはがしたり床を張りなおしたりしますので、同時に耐震補強を行うことで、予算を効率的に活用することが出来ます。
建てられたのが30年前ということで、図面もありませんので以下の手順で進めていきます。
@平面図を書くための間取りの調査 A壁の構成(=壁に使われている材料)調査 B筋かいの確認 C基礎構造の確認 以上の調査のあとに、D平面図の作成 E耐震診断計算 と進んでいきます。
写真は、センサーを使って壁の中の筋かいを確認しているところです。
筋かいがあると、パソコンの画面にラインが表示されます。

基礎に関しては、実際に掘ってみて基礎の深さや巾を測定します。

また、目視できるところは、天井裏や筋かい端部などを確認していきます。
このような流れで、まずはしっかりと現在の建物の状況を把握します。
この調査結果を元に図面を書き、耐震診断の計算を進めていきます。診断の結果、1階部分は「倒壊する可能性がある」、2階部分は「一応倒壊しない」となりました。この結果を受けて耐震補強計画を行い、補強工事をしていくこととなりました。

耐震補強状況です。筋かいの追加・金物補強を行うと同時に、耐震壁をバランス良く配置していきます。
さらに、地震による力を的確に受け止められるよう、設計者の判断で上の写真のように補強材を入れました。

補強後は、内装を新しくして工事完了です。断熱材も追加し、暖かい部屋になったと喜んで頂きました。
玄関を入って正面の玄関飾り壁は旧来のままとし、右隣の収納内部の壁から補強を行っています。歳月を経て味わい深い表情を持つ部分は、極力残していくことも設計者の大切な仕事です。
お客様から「リフォームと合わせて耐震補強を行うことで、安心しました。気持ちが明るくなりました」と言って頂きました。お役に立つことが出来て、私たちもとても嬉しかったです。
免震住宅への取組み
当事務所で設計した、フリープラン(間取りに対する制約が無い)の木造2階建免震住宅が、平成18年4月に完成しています。この住宅は、定年を迎えられるご夫婦2人のための住宅です。家庭菜園のあるゆったりとした敷地に、大きな吹抜けのあるリビングと、本格的トレーニングマシンを備えたトレーニングルームが特徴の家です。
1. 免震住宅のメリット
近年、地震災害が多発していることから、地震に対する住宅の安全性に強い関心が寄せられる様になってきました。特に、退職後自宅で過ごす時間が多くなる世代の方々には、その関心が高いようです。地震時にすばやい避難行動ができるだろうかという思いが、免震住宅を考えるきっかけとなっています。
「家具が倒れてきたらどうしよう」「ドアは開けられるだろうか」「家財がメチャメチャになると経済的打撃が大きい」など様々な心配がありますが、免震住宅にすると、震度4以上の地震であっても、家自体は1/3〜1/7程度しか揺れません。家具が倒れたり、ドアが開かなくなったり、家財が破損する心配が無いので、あわてて避難しなくても「安全」なのです。
2. 免震住宅にかかる費用
免震住宅には、@地質調査(ボーリング調査)A構造計算 B免震装置本体 C鉄骨フレーム、これらの費用が通常の工事金額に追加で必要となります。
大まかな額ですが、@〜Cの合計で床面積40坪の総2階建で300万〜350万円、床面積60坪の総2階建で450万〜500万円の費用が免震設置分としてかかります。
免震住宅の費用に関しては、建物形状・地盤の固さにも影響されますので、詳しくは当事務所までお問い合わせ下さい。
3. 免震住宅の価値
免震住宅は「安心・安全」であり、大地震時の経済的打撃を最小限に抑える事ができるというメリットがあります。建設時の初期費用は必要となりますが、家の安全を考えた時、検討する価値のあるシステムであると考えます。
免震住宅の概要
免震装置の働き
写真による免震装置の施工解説
免震装置がセットされた状態。
この面がすべる事により地震の揺れを伝えにくくします。テフロン加工の様にツルツルしています。
免震装置がセットされた状態の全景です。
免震装置の上に鉄骨製土台をセットし、その上に木製土台を組んでいきます。
鉄骨製土台より上は一般木造住宅と同じ構成で建てられます。
コンクリート基礎は地盤と一体化し、同じ揺れ方をします。鉄骨製土台から上は、免震装置の働きにより、基礎よりも小さな揺れ方をします。
玄関ポーチの階段は、地面より少し浮いた状態となっています。