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太宰の文体実験(津軽)

無言文体2(和歌)


太宰の文体実験(津軽)
平成22年2月11日〜平成23年1月1日〜平成23年5月31日〜


1   言霊にひかれひかれて斜陽館 道なかばにて早や幾年か

2   文字無言 無言文体に隠り(こもり)ゐき 「津軽」港の旅人太宰

3   代官町百石町五十石町 リズミカルなる無言文体

4   あの世から熱き青春に会ひたくて 事務所休みてヴェルレーヌ見あぐ

5   病床の百歳の主役に記すなり 青春香る斜陽館のノートに

6   走れメロス小野先生を見舞はむ この世の呼吸句読点となる

7   「ゴーゴリ」の走りに命救はれし その刹那ヒラリ右目は後方へ

8   車来る轢かれむとする息を飲む 無言文体脳芽す

9   ふくよかな女人白き車にて待つ 轢かるる刹那飛び跳ねし所に

10  句読点数ふるたびに異なりて 句読点無き世に生まれたし

11  空腹のネズミ語胸に聞こゆ来る かわゆく動き右耳喰らふ

12  幽かなる樹語ネズミ語に聞き惚れて 無言のうちに世界無となり

13  ナポレオンの幼年学校の雪合戦 黒き石をも気合入れ投ぐ

14  トルストイの数学熱く革命叫ぶ されど津軽の太宰無言

15  ケータイのみそひと文字の点滅す 若きら交はす太宰語無言

16  ヴェートーヴェン「歓喜」にシラー紡ぐ時 「津軽」瓣をば無言でつむぐ

17  のりうつる太宰の御魂(みたま)方言詩に 「桜桃のつどい」無言の渦

18  マルクスも太宰の脳も無かりけりな 「人体標本展」にただ無言のみ

19  太宰とふおもかげ似れる標本の 右脳の赤き血管に魅入る

20  <おい[oi]>を太宰<おエ[oi”]>と発音するなり 妻解き明かす文体の秘密

21  求めしはありや無し小野先生の、太宰のイエスの謎言の葉

22  背中見せ泡沫見つつ芝居せし 太宰思ふは神のおはりを

23  言霊雑草の露一ッにも無言極めば太宰の神世界

24  鎮もりて無言文体追ひ求む霧ゆるる影に太宰のキリスト

25  口うつす言霊神に化身せむか太宰一人光に揺れて

26  高等小学校教本捨て、無学道化に生きし母に「生まれてすみません」

27  斜陽館に遺されし英語詩 我が右脳を無言にせし四年

28  英語詩の美しき四年流れゆく 義の為に迫害(ラダフHebrew)されし民想ふ

29  「日の丸のチームは一つ」絶叫我が鼓膜突くや ホームページも侍ブルー

30  「歓喜」(Freudeフロイデ)終はるやいざや戦場 サッカーの起源髑髏(しゃれこうべ)蹴る

31  ヒデと我[waワ]の左手の指疼きし時 敗るるさだめ日の丸白し

32  たたみかけサッカーの如く言霊蹴り 「聖母マリア」に」祈りしロナウジーニョ

33  靴買えぬ子等ボールを日がな蹴りし ボールに我は問ふ「貧窮問答」を

34  いづこよりいづこに消ゆるか五千年 縄文の地吹雪今 口にー三内丸山を想ふ

35  スコットランド、霧濃くむせぶ声聞(せふもむ)の君が息さへ我アーナンダ

36  鴎外の墓へ小さく掘り行かむ紅きトンネルにむしあつさ無し

37  肩くまむ熱き血潮よもえたぎれ響け校歌も我と我が胸に

38  神掛けて上り詰めなむ空高くいよよ冴えなまし君が絵の青

39  凍てつきし暗き廊下にゆったりとパイプくゆらし微笑たまひし

40  ふと立ちて眼に飛び込みしヘーゲルを取りて貸したる君が熱き血

41  やすらかな京の一日(ひとひ)の松籟に平和おぼすらむ亡きチャーチルも

42  桜桃忌暑さ篭るる人いきれレインコートから顔出す 太宰か

43  万博のゲル近し彼の人体の模型の発音か無言の我に

44  まどろみて夢発見せし玄関に南(みんなみ)の陽(ひ)は深く脳射る

45  原子核青白き閃光知るや笑て太宰左の頬出す

46  「神の発見」の前日に身罷りしとふ逆流するは何我が脳内を

47  太宰の発見せし神キリストに我も真向ふる弐拾壱世紀

48  学び舎はひそと佇み静もりし革命の狼煙上げし学び舎は

49  見えざる神の手に導かれ無言革命のバリケード超え行きし

50  二人だけの卒業式の学び舎に凛と白雪の結晶降りし

51  見えざる手神にしあらば言霊の 幸はふ国に平和革命を

52  「葉の裏の青くぢりぢり喰はれゆく」葉子感性する太宰の文体

53  言霊は葉子ふるわせ震えつつ太宰は生ける  虚構「津軽」に 

54  警官の手が止まってしまひし三等列車父の米のリュックの前で

55  幽かなる風のひとひらキリストか駆ける裸馬楚(しもと)取るゴディヴァ

56  軒先を斜陽あかあか夢のやう<不言対話>は三和土(たたき)に響く

57  眼覚むれば<神の見えざる手>は招く地獄くぐりし太宰の顔を  

58  キリストとふ見えざる神の手は太宰を無言の街に迎ふる

59  「雪のオルガン」は地吹雪の音を消す<不言対話>に凍土しづもる

60  幽かなる<不言対話>の聞こゆ来る煌々と青き神の手    
 
61  おほふ物何も無けれど奔りに奔るチョコおほふ紙にゴディヴァ奔る

62  騾馬にムチ城主に訴ふ税下げよ語りつがるる深き味チョコ

63  楚(しもと)鳴り里長の影忍び寄る棄民の群れを奔るゴディヴァ

64  青々と波は煌めき岸に寄せ語らむ盲目(めしひ)の津軽三味線を

65  つもりゆく音無き雪の深々と教主いづこか絹の糸鳴る

66  左手の薬指音吸ひゆきて 無言で二代目三味線たたく

67  <あいや節>撥たたく手の 八の字ならず我が心臓汗滴り落つ

68  スクリーンに身投ぐる二代目 眼は黒々と初代の顔なり

69  撥を一瞬止めてしまひし<三下り> 空気無言にせし間(ま)の生命(いのち)

70  戦世(いくさよ)に初代竹山乞食芸(ほいどげい) いざ血を戦げ(そよげ)津軽三味線(つがるじゃみせん)

71  三月壱拾壱日闇いそぐ通夜に雪明らばホット父の月命日

72  避難所のお握り奪ひし大津波夜の凍ばれ(しばれ)に糸川(イトカワ)の齢
    (よはひ)無し

73  ふるさとの山河飲みし大津波宇宙の食道はありやなし

74  食道をどす黒く逆流せし塩の水おい!大津波よいづこへ

75  水浸く(みづく)屍(かばね)と海泳ぐ大津波 拉(らつ)されし人今救はるる

76  松島に誘(いざな)ひし父の眼ありや亀裂走る瑞巌寺の壁に

77  國破れしが緑溶かせし水さやか太き蛇のたうつ松島逃げよ

78  めくるめく松島の松飛び去りきカメラ写せしや芭蕉の顔を

79  米兵とその妻舟上(せんじょう)なりし大津波我が脳内過客にす

80  米兵の妻マリリンモンローかその母和服にひそやかなりき

81  忍者のごとき老人を車スローにはねとばしき松島水浸く

82  見つめ来る津波の中の眼は無言ああ松島や彼岸旅せむ

83  海風(うみかぜ)の野外演劇に夜の雨三内に浮かぶ縄文「太宰」

84  縄文の巨大御柱篝火の太宰の「津軽」を火の粉踊る

85  「君は誰(た)そ」弱き太宰の声愛し(かなし)我に向かひて舞台から問ふ

86  太宰の声の「君は誰そ」舞台の津島修治を貫通せり透明に

87  実験室にDNA飛散せり一輪車軍団の黒子艶めく(なまめく)

88  舞台すみに本無言昭和壱拾七年大東亜経済年報

89  高見にて菖蒲の「タケ」に太宰会ふ愛しき心柔柔(やはやは)に無言

90  憶良らは唐語(からご)学びて倭歌アダムスミスは唐語独語す

91  リズム打つ漢詩の息づかひ消ゆスキャットに宇宙招くアダムスミス芭蕉を