呼ぶもの






























目の前は闇

夜の帳が空を覆い

闇が海を支配し黒々と静かに蠢く

その闇に向かい男が立っている。

彼は岬の先に立ち風になぶられるまま立っている。

風に白いコートのすそがはためき

金色の髪がもてあそばれ乱れていく



ピュ――――



風が物と物との間をすり抜け物悲しい音を奏で



ピィ――――



彼の唇から発せられる音が哀しく風に乗る


「良くないものが寄ってくるよ。」


唐突に彼の背後から幼子の声が聞こえた


「闇に向かう口笛は良くないものを呼ぶよ。」


白い幼子は彼の背後の闇からぼうっと現れ繰り返し呟く


「闇に向かう口笛は良くないものを呼ぶよ。」


幼子の声が聞こえているのかいないのか彼はただひたすら口笛を吹き続ける。



ピィ―――――――――



彼の吹く口笛は周りの闇に吸い込まれてゆく


「呼ばれるよ良くないモノが。」


幼子は一言そう言うと現れたときと同じようにすぅと闇に溶け込んだ



ピィ―――――…



幼子が消え、空が白みだすかと言う頃ぷつりと音が消えた


海から出てきた日に照らされた岬に


白いコートがふわりと落ちたかと思うと



ピュ――――――――――



風にさらわれ群青の海へと誘われていった。


『呼ばれるよ。口笛に呼ばれた良くないものに呼ばれるよ。』


岬に吹く風に運ばれ幼子の声が響く


岬には日に照らされた花瓶が1つ


そして…


男物の靴が一対。




『いらっしゃい――― お と う さ ん 』




幼子の声がかすかに残った闇から響き朝を告げる日に照らされ消えた




















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アトガキ(懺悔)
…いえね、なんかサイト巡ってたらふと浮かんだんですよ。
んでイメージが消えないうちにと思って書いたらホラー風に(汗)
ど、どないしょ(どうしようもない)
そしてやたらと短いしっ
04/10/4脱稿