兄さんが泣いていた 守られるようにして 泣いていた。 僕は兄さんの重荷にしかならないのだろうか。 重い精神と身体 この前東部に行ったときたまたま兄さんと別行動になった。 用事も済み、兄さんと決めた待ち合わせ場所に行ったけどまだ兄さんは居なかった。 10分 20分 30分 1時間 最初のうちはちょっと遅れているだけだろうと思っていたけど、さすがに1時間まっても兄さんが来ない事に僕は不安を感じた。 『もしかして何かがあったのではないだろうか。』 その考えが浮かんだ瞬間僕は走りだしていた。 1分 5分 10分 こういう時疲れを知らない体というのは便利だと思う。 どんなに走っても疲れない体 眠らなくても平気な体 食べなくてもお腹がすかない体 本当は僕の体はとても便利である意味とても重宝するものだ。 だから本当は兄さんほど僕は下の体に戻るという事に固執していない。 ただ、僕は兄さんが幸せならそれでいいんだ。 僕は別にこのままの体でもかまわない。 でもそれだと兄さんが永遠に、それこそ死んでも僕に対する罪悪感が消える事が無い。 兄さんは兄さんのせいで僕の体がこうなってしまったと思っていつも自分を責めている。 でも兄さん、僕は兄さんのせいでこんな体になったんじゃないんだ。 僕の意思、僕の決断によってこの体になったんだ。 どれくらい走っただろうか。 疲れる事を知らない僕の体では疲れによって時間を測る事はできない。 時計を確認すると大体20分は走っただろうか。 ふと気がつくと僕は東方指令所の近くに立っていた。 何故僕はここに来たのだろうか。 そう思いつつ辺りを見回すとどこからともなく泣き声が聞こえてきた。 その泣き声は子供のようにしゃくりあげ、そしてそれを必死に隠そうとしているような感じだった。 兄さんを探さなくてはいけないのに僕は何故かその声に惹かれるように歩き出した。 いつもはガシャガシャ言う鎧の音を何故か立てないように気をつけながら 静かに声の方へと歩み寄る。 そして僕は息を飲んだ。 兄さんが泣いていた。 兄さんは目の前に居る青い軍服の人すがりつくように泣いていて 青い軍服の人も兄さんを外敵から守るようにして抱きしめていた。 僕は兄さんがすがりつくように泣いている姿に驚き 青い軍服のひとが浮かべている慈しむような表情に驚いた。 2人の姿は普段の姿を知っている者には衝撃を与え 何も知らない者にはとても親密な印象を与える。 そして僕は兄さんのその姿に愕然とした。 僕が弟だからだろうけど兄さんはああいう涙を僕に見せる事はまず無い。 僕が弟だから 兄さんは僕に罪悪感を持ち 兄さんは僕に涙を見せない。 ねぇ兄さん 僕じゃ支えになる事はできないの? 僕は重荷じゃないの? 僕は… 僕は… 兄さんにとって必要な存在なの? 兄さん僕は僕のためじゃなく兄さんのために石を探すよ。 たとえ僕の体が元に戻らなくても兄さんの体は絶対に直してみせる。 そしてできたら僕の体も直してみせる。 そしたら兄さんから『僕』という重荷が消えるかな? Fin? ****************************************************** アトガキ(懺悔) えっと本人はシリアスなつもりです。 が、以前友人にシリアスのつもりで書いたものを 『ギャグ』 と言い切られたことがあるのでかなり不安です(汗) また言い切られたらどうしよう。 Back |