俺が彼から最初に与えられた玩具はPCだった。





















Fabricated a whole set of lies



























物心がついた頃にはもう俺の周りはコンピュータであふれかえっていた。


俺は何の疑問も抱かず与えられたそれらの玩具で次々と新しいことを覚えていった。


文字、言葉、文化、世界情勢、歴史…さまざまなことをネットワークを通して学び吸収していく。




彼は俺が望むものは何でも俺に与えてくれた。




あれは5歳のころだっただろうか、俺は誰かに操られた情報ではなく真実の情報が知りたくなり彼に相談した。


すると彼は満足そうな笑みを浮かべ、一人の教師をよこした。


その教師の名はRE<リー>と名乗りすぐさま俺が望みをかなえるための手段を俺に詰め込み始めた。


セキュリティの突破方法、ダミーの作成、進入経路の選択方法、ウィルスの作り方、セキュリティーホールの見つけ方…



とにかく俺はその頃楽しかった。


自分の望みを叶えるための技術を学び、活用し望んだものを得る。


学べば学ぶほど自分が欲したモノが手に入る快感…これはいまだに俺の中から消えることは無い。




いつしか俺はREを追い越し学ぶものは無くなっていた。


その頃からだ、俺の力に目をつけたREは自分と組んで情報屋をしないかともちかけてくるようになったのは。


いくら俺がその気がないと言っても聞く様子がまったくなかったため、俺は彼に『勧誘がしつこくてうっとうしい。どうにかしてくれ』と訴えた。


いつものように彼が俺の願いをすぐさま叶えてくれると俺は思っていた。


しかし彼の口からは俺が予想していない音が流れてきた。



「本当にそれでいいのか」



いつものような俺が望む答えは返ってこなかった。


驚きに目をすこし見開いた俺と目を合わせながらなおも彼は俺に質問を重ねてきた。


「REと共に去っていってもいいんだぞ。」


本当に驚きの連続だった。


と同時に怒りもこみ上げてきた。



彼は



彼は…



「俺はあなた以外の人間についていく気はまったく無い。」




俺が彼以外の下につく気がまったく無いことを気づいてくれていなかった。




しかし、今思うと彼はそのことに気づいていたのだろう。


その証拠に俺の記憶にあるその時の彼の笑みが、俺の言葉に感動した笑みではなく満足ゆえに出てきた笑みなのだから。


しかし俺はそのことにまったく気づいていなかった。


ただ俺の言葉に彼が笑みを浮かべてくれたことが嬉しくて彼の役に立ちたい、そう考えていた。


そしてその次の日からREは俺の前に姿を現すことは無かった。





その1件があったすぐ後俺は彼に手伝いを申し出た。


まだ幼くても当時の俺はすでに大人顔負けのハッキング能力を有しており、即戦力になれると確信してのことだ。


彼は俺の言葉を聞くとまたあの笑みを浮かべ『無理をしないこと』を条件に許可をくれた。


その日から俺は自分が持てる全能力を使って彼が望む情報を盗み、彼が望むように情報を改ざんし、消去もした。


俺が彼の望みを叶えるたびに浮かべる彼の笑顔が嬉しくて俺は更にその能力を磨いていった。





しかし転機がある時訪れた。



彼が作り出した組織が解散することになった。


俺は彼についていこうと必死になって彼を探したが結局彼は見つからず俺は施設に押し込められた。


そしてそこで知った真実に俺は愕然とした。


結果から言うと俺は彼の手のひらで踊らされる人形だったのだ。



俺の頭を優しくなでてくれたのも偽り



苦笑を浮かべながらもわがままを聞いてくれたのも偽り



怖い夢を見たと泣いたとき微笑みかけてくれたあの笑みも偽り



俺を躍らせるための偽り



俺は偽りの中で生まれ



偽りの中で育ち



そして



そして



捨てられた




それから程なくして俺は施設から抜け出した。


幸いあの偽りの生活の中で身につけた技能が役に立ち日々の糧を稼ぐこともできた。


そして仕事を進めていくうちにだんだんと世の仕組みが見え始めてきた。



世界の裏側でうごめく何か。



それらは常に世界をその指先で操り動かしている。



だが決してその姿が明るみに出ることは無く



ほとんどの人間がその存在に気づかないまま生活し、また知らないまま死んでいく。



だが見えないだけでたしかにいるその『何か』



そしてその『何か』が俺にも関係があるという事。




そして更に時は流れ俺は懐かしい名前を見た。



施設を抜け出したときに捨てた名前


今ではもう、誰も知るはずの無い名前


その名前で依頼が入ってきた。


内容はただ指定の場所にこれまた指定した日時に潜入し情報をできる限り盗み出すこと。


そしてその情報を随時記録し後日引き渡す。


潜入期間は1日


ただそれだけの依頼。


そして俺はその依頼を受け今ここにいる。


もしかしたら俺は気づいていたのかもしれない。


気づきたくなかったのかもしれない


だけど気づいてしまった


彼らがココにいることで気がついてしまった













あの偽りの時の流れの中唯一真実だったものが2つだけある



それは…



俺が彼を慕う気持ち



そして



彼が浮かべたあの満足から出た笑み



それだけは




けっして偽りじゃなかったんだ












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アトガキ(懺悔)
えっと…なんか微妙にというか完璧にネタバレしてるような気が(汗)
ま、とにかく主人公の過去はこんなもんです。
問題があるとしたならば
こんなんで9Pも稼いだあげく名前変換が1個も無い小説を書いた
管理人だろうな。