俺は暗い廊下に落ちていたソレを手に取ってみた。




ソレは意外と手にしっくりと馴染む




そして俺はソレを上から軽く振り下ろしてみる。




そして……


























畑ちがいもいいところ

























俺は夜のビュッデヒュッケ城を悠々と歩いていた。



今日の分の仕事も終わった事や、ゲドさんのおごりで飲んだ酒がものすごく旨かったなどという理由で俺はとっても上機嫌だった。



そして俺は自室へと帰る道の途中でソレを見つけた。



ソレは廊下の真ん中で窓からの月明かりに照らされ怪しく輝いている。



見たところ主な材料は持ち手の部分に使われている木と羽。
そしてその羽はたぶん…おそらく…きっと…





カラスの羽だ





だって月明かりがあるとはいえ、夜は夜暗いことには変わりは無い。つまりは良く見えない。
が、この濡れ羽色というかなんというかな色は間違いなくカラスだろう。





悪趣味な





しかしそう思いつつも手は徐々にソレに近づいていく。



悪趣味なのに…悪趣味なのに…せめて白鳥の羽にしとけよ



そしてソレを手に取ったとき俺は愕然とした。





どうしよう。手に馴染んじゃったよ。





こんな悪趣味な(しつこい)ものが俺の手に馴染んでしまった…きっと父が見たら口の端を少し上げて鼻で笑うだろう。



そして何故か腕はソレを頭上に高々と掲げ



振り下ろした。



その時俺は腕が勝手に動くことよりも
「こんな格好(悪趣味なものを掲げている姿)を誰にも見られませんように。」
としか考えていなかった。良く考えると馬鹿だ。



とにかく俺はソレを振り下ろした。
とたん










ミィィィン






ズゴーン






ガラガラ










紫っぽい色の何かがソレの先から発射されどこかへ飛んで行き、なにかを壊した。






ナニコレ?






面白!!





俺はとりあえずその場から逃げ森の中に行くとソレを振り回してみる。
もちろん自然破壊や本拠地破壊はよろしくないので空に向かってだ。




ミィィン


ミィィィン


ミィィィィィィィィンン
ミィィィィィィィィンン
ミィィィィィィィィィィィィィィィンンン!!














その後満足して自室に帰った俺は振り回すことによって得られたソレの情報をまとめてみた。




1、 羽はたぶんカラス
2、 カラスの羽を使用という所から所有者はきっと悪趣味
3、 何故か俺の手にしっくり
4、 そして何故か羽の先から変な光がでてくる
5、 さらにその光は破壊力有
6、 面白い
7、 廊下に落ちていたことから誰かの落し物。有力候補としては悪趣味つながりでルック(仮面が悪趣味だから。)
8、 壁は結局誰が直したんだろう。




以上だ。
いくつか振り回したことにより得られた情報じゃない気もするが気にしてはいけない。



とにかく今わかることは



寝よう。俺今日寝不足だったうえに酒を3本開けちゃったし。
それにもしかしたらアルコールを摂取しすぎたせいで幻覚が見えたのかもしれないしな。



そして俺はソレを何故かベットの下にしまうと夢の中へと引きずり込まれていった。



夢に入る瞬間誰かの高笑いが聞こえたような気がするが気のせいだろう。
幻水のなかで高笑いをする奴なんて今作出てないし。
















朝日に目を細めつつ意識を覚醒させるとなにやら城内が騒がしかった。



何かあったのかと慌てて服を着替え武器を装備すると俺は部屋を飛び出した。



ふと、走っている途中に気がついたことがあった。



…なんで俺は武器の中に昨日拾ったアレを入れてるんだ?



そう…な・ぜ・か、俺は装備している武器の中にアレを自然に入れていた。
というか俺ベットの下にしまったよな?





ま、いっか。








「ゲドさんどうしたんですか?朝からこんなに騒がしいなんて。」

「ああか、朝起きたらナッシュが廊下で倒れていたらしい。」

「ど、どこの廊下ですか?」

「ヒューゴの部屋の前だ。リーダーの部屋の前だったためこうまで騒いでいるようだ。」

「よかった、俺じゃない。」

「なにか言ったか?」

「いえなにも。」

「そうか。」

「ええ。」










数時間後意識を取り戻したナッシュに話を聞くと


なんだか高笑いをする黒い人影が宙に浮きつつ高速で接近し、気がついたらベッドで寝ていた。




だそうだ。




というか人間じゃないだろ。宙に浮きつつ高速で接近って。


で、そのことを聞いて会議を開いた結果、見回りを強化することにしたらしい。
モンスターだか幽霊だか知らないけれど得体の知れないものが城の中にいると子供たちが不安がるから。
だそうだが俺の目の前に広がる光景を見ると嘘にしか聞こえない。


何故見回りなのにくじ引きでペアを作ってるんだ?
しかも何故全員(強制)参加?
これは明らかに




肝試しだろう?




いつの間にかルートなんてのも決まってるし。
いいのかよコレ。全員夜更かしが過ぎて寝不足で破壊者御一行様に全滅させられたとか言ったらしゃれに……マジでならん。



「それにしても俺って運がないのかな。ねぇナッシュさん。」

「俺とペアだとなんで運が無いことになるんだ?」

「ナッシュさんの不運が俺にも移るから。」

「………」

「納得?」

「………」



そう、俺のペアはナッシュだった。

なんでか俺はこの人と相性が悪く、一緒に行動するたびにえらい目にあう。


虫やら犬やらに追いかけられたり、すりにあったり、野党と出くわしたり…とにかく数え切れないほどえらい目にあう。



嫌な予感がする。



そして運が無いナッシュがいるためか俺たちの順番は最後になった。

しかも一番最後は特別ルールで誰もいない城内を歩くとか。

誰だよこんなルール考えた奴は。


……ヒューゴか。おおかたこの肝試しの立案者もヒューゴだよな。
後で仕事全部回してやる。



そして俺がヒューゴへの嫌がらせを考えているうちに順番はどんどんと進んでいき、ついに俺たちの番になった。
主なメンバーほとんどがニヤニヤ笑っているのが無性に腹立つ…



そして俺たちは嫌な笑いに見送られ、本日最大の不幸が待ち受ける城へと1歩踏み出した。





暗い…



廊下も少し暗いが隣にいるおっさんはもっと暗い



昨日何があったのかは知らないが良い年したおっさんが15の俺に引っ付くのはやめて欲しい。むさくるしくてかなわない。
実際にいるかどうかわからん奥さんに写真送りつけるぞ。



とにかく俺たちは廊下を進んでいた。

そして1,2階は全て見終わり地下へと進んだときヤツはついに現れた。


「フハハハハハハハハハハハハハハハ」


…今なんか聞こえたな。」

「きっと誰かがルカのモノマネをしてるだけです。進みますよ。」

「いや、わざわざルカのモノマネを地下でしてる奴も怖いから。」

「じゃぁ、本人ということで。」

「よけい怖いだろ!!」

「そんなことはどうでもいいですからさっさと歩いてください。俺は早く机の上に遠慮なく積み上げられていく書類を片付けなきゃいけないんです!!それともナッシュさんが代わりにやってくれるとでも!?」
「ごめんなさい。」

「じゃあさっさと終わらせますよ。どうせあの声も誰かのイタズラです。」


そう言って俺はスタスタと声のするほうへと進んでいく。というよりも俺が進むべき方向から高笑いが聞こえてきてる。





ちなみに後からナッシュに話を聞いたところ「漢らしい。」と呟いていたそうだ。

なんだよ「漢」て。





そして角を曲がると同時に俺は声の正体を見た。

その時まで俺は声の正体を上にいた誰かのイタズラだと決め付けていたが、それがこの瞬間砕かれた。

声の正体は……



「し…司馬○」

「なんで真・三国○双の奴が幻想水○伝の世界にいるんだよ。」

「それいぜんにメーカーからして違うだろ。」

「そうだよな、黒くて宙に浮いて移動するうえに高笑いするキャラなんてヤツしかいないよな。」

「俺がくらったのはダッシュ攻撃か。」



そして俺たちが話している間もヤツは高笑いしながら床を見つめ何かを探している。


「フハハハハハハッグホゲホゲホ」


下を向いたまま高笑いをしたためむせたらしい。



馬鹿だ。



「クッアレが無いとやはり調子が出ぬな。まったくどこに落としたのだ。」



…そういえばトレードマークとも言うべき羽扇を今司○懿は持っていない。



「…道の邪魔ですね。どかしますか。」

が、ぶっちゃけ俺は司馬懿(伏せるのも面倒になった)がどうしてこの世界にいるのかとか落し物は受付にとかどうでもいい。
とにかく俺はさっさと肝試しなんか終わらせて書類を片付けなくてはいけない。
そう決意し瞬きの紋章でどっかに飛ばしてしまおうと意識を集中し始めると…

司馬懿がこちらの存在に気づき突っ込んできた。


「フハハハハハハハハハハ馬鹿めが!!」


そして俺たちは突然のことに対処しきれず吹っ飛ばされる。


虹のように綺麗な放物線を描きつつおれは思った。


(やっぱりナッシュと一緒にいるといいこと無いな俺。)


そして同じように放物線を描くナッシュを見ると何故か彼は笑いながら泣いていた。


(キモイよナッシュ)


それが俺の最後の思考だった。








気がつくと俺はこの前のナッシュと同じように医務室のベッドに寝かせられていた。

詳しい話を聞きたがる皆に俺は何も言いたく無かった。

というより思い出したくも無かった。

最後に見たナッシュの顔を……




ちなみに俺より先に起きたナッシュは何も覚えていなかったらしい。

2回も同じ攻撃を食らったりしかも攻撃してきたのがどちらかというと文官タイプの人間だったせいでどうやら精神的に大打撃を食らったようだ。

証拠にぼそりと「司馬懿」と呟くと面白いほどに過剰な反応を返してくれる。その反応が面白かったためしばらくの間ナッシュが俺のストレス発散用玩具と化していたのは言うまでも無い。
なぜならちょっと気に入っていた羽扇がいつの間にか消え、玩具を失った俺はちょっとだけ不機嫌だったからだ。



そして時間と共に「黒い何かがいる」という話は誰からも忘れ去られ、覚えているのは実際被害を受けた俺とナッシュだけになった。
時の流れとは偉大なものだ。






数年後、またヤツに会うことになるとを俺は全然予想していなかった。
むしろ会わないことを祈っていた。
が、結局また会ってしまうとは……絶対にナッシュに運を吸い取られたに違いない。












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アトガキ(懺悔)
微妙な文になってしまった。
というかただ単に司馬懿を出したかっただけなんです。
ぼーっとしてたら頭の中に高笑いしつつ夜のビュッデヒュッケ城を
徘徊する司馬懿のイメージが浮かんだため書きたくて、書きたくて。
もしかしたて気分が向いたらちょっと書き直すかも知れません。
それにしても私にしてはものすごく長かった。